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【 蕁麻疹(血管性浮腫を含む) 】と漢方薬による治療

蕁麻疹(じんましん)とは


蕁麻疹とはなんらかの原因で皮膚にかゆみをともなった紅斑(こうはん)や膨疹(ぼうしん)が生じる病気です。紅斑とは皮膚の赤みであり、膨疹とは皮膚がやわらかく丸みを帯びて盛り上がった状態です。蕁麻疹はニキビに代表される湿疹のように傷が残ることはなく、症状が治まると患部は何事もなかったようにもとに戻るという特徴があります。


蕁麻疹は現れてから数分で消えるものから、数ヵ月以上も症状が出続けるケースもあります。生じる場所もさまざまで、身体の一部に現れるものから全身に生じることもあります。蕁麻疹をもたらす原因はアレルギー性のものと非アレルギー性のものに大別されます。アレルギー性のものは青魚やソバなどの食品が代表的です。そして非アレルギー性のものは圧迫、寒暖、日光といった物理的な刺激が含まれます。


やや余談になりますが蕁麻疹における「蕁麻」とはイラクサとも呼ばれる植物の名前です。このイラクサの葉には小さなトゲがあり、触れるとアレルギー反応による炎症が起こることが「蕁麻疹」の由来となっています。


蕁麻疹(じんましん)の原因


蕁麻疹を引き起こす原因は大きくアレルギー性のものと非アレルギー性のものに分けられます。アレルギー性の蕁麻疹は特定の物質と肥満細胞(マスト細胞とも呼ばれます)が結合するとヒスタミンが放出されます。このヒスタミンが皮膚のかゆみや腫れを起こします。


アレルギー反応を起こす原因は食品や薬などの化学物質の摂取、動植物との接触によって起こります。具体的にはサバ、エビ、カニなどの魚介類、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類、大豆、小麦、ナッツ、ソバなどの穀類、トマト、キャベツ、ジャガイモ、ホウレンソウなどの野菜類、レモン、リンゴ、キウイ、バナナなどの果物、卵や乳製品、食品添加物や薬、ダニやペットの毛、虫刺されや植物との接触などが代表的です。これらの原因物質はアレルゲンとも呼ばれます。


非アレルギー性の蕁麻疹の原因は物理的な刺激、気候や環境、体調の変化などが挙げられます。 具体的には皮膚の圧迫や摩擦、寒冷や温熱、日光、運動、発汗、疲労、精神的なストレス、感染などが引き金となって肥満細胞からヒスタミンが放出されると考えられています。


このように蕁麻疹はさまざまな刺激によって引き起こされ、体質による個人差が非常に大きいことが知られています。その為に原因が特定できるケースは多くはなく、医療機関で検査を行ってもその原因を突き止められないこともしばしばです。一方で、漢方薬を構成する生薬には食品としてもちいられているもの(具体的には小麦やミカンなど)も多く存在するので、わかっている範囲で治療者にアレルゲンを伝えることが大切です。


蕁麻疹(じんましん)の症状


蕁麻疹の主な症状は皮膚の紅斑や膨疹とかゆみです。これらは局地的に点状や線状に生じる場合から、広範囲にまるで地図のように現れる場合もあります。患部に赤みや膨らみやが起こるのは肥満細胞から放出されたヒスタミンが血管を拡張し、血中の水分が血管外へ漏れ出た結果です。


頻度は相対的に少ないですが、血管性浮腫と呼ばれる口唇、まぶた、手足、喉などが腫れてしまうタイプの蕁麻疹も存在します。血管性浮腫の場合、かゆみはともないませんが患部にヒリヒリとした熱感を感じることがあります。喉の腫れが強く現れると食べ物を飲み込みにくくなったり、息苦しさを覚えるようになります。血管性浮腫はクインケ浮腫と呼ばれることもあります。


血管性浮腫を含めた蕁麻疹の症状は現れてから短時間で消えるものから数ヶ月も続くケースがあり、症状の現れ方と同様に個人差が大きいです。一方で掻きむしったりしなければ患部に傷痕が残ることはありません。


蕁麻疹(じんましん)の西洋医学的治療法


蕁麻疹の西洋医学的な治療にはヒスタミンのはたらきを抑える抗ヒスタミン薬が主にもちいられます。効力は塗り薬より内服薬の方が優れている一方、眠気や集中力の低下といった副作用の頻度も高くなる欠点があります。このような副作用が目立つ場合はマスト細胞からヒスタミンが放出されることを抑える抗アレルギー薬ももちいられます。


蕁麻疹(じんましん)の漢方医学的解釈


血管性浮腫を含めて漢方の立場から蕁麻疹を考えると、急性蕁麻疹は外邪(特に風熱邪や風湿邪)が身体を侵した結果と考えます。慢性蕁麻疹は食生活の乱れや精神的なストレスなどによって身体内に熱が生まれたことで発症することが多いです。これ以外にも気が不足すると抵抗力が低下して容易に外邪の侵入を許してしまいます。くわえて、血の不足は肌の乾燥を招きちょっとした刺激に対しても敏感になってしまいます。


現実的には過労などによって気血が不足したことで外邪が侵入し、その侵入によってより気血が消耗して慢性的な蕁麻疹になってしまうケースが多いと考えられます。したがって、ただ皮膚の状態を考えるだけではなく、全身の症状や体質から蕁麻疹の原因を考えることが大切になります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた蕁麻疹(じんましん)の治療


急性蕁麻疹の治療には皮膚の赤みやかゆみを鎮める清熱薬、外邪を発散させる解表薬を組み合わせた漢方薬が主に使用されます。慢性蕁麻疹に対しては少なからず気血の不足が関係しているので、それらを補うことが不可欠です。したがって、蕁麻疹の症状の現れ方や体質から清熱薬、解表薬、補気薬や補血薬のバランスが調節された漢方薬を治療にもちいます。


その他にも精神的なストレスによって蕁麻疹が起こるケースでは気の流れを改善する漢方薬、蕁麻疹にくわえて肌にアザやシミが目立つ場合は血の流れをスムーズにする漢方薬も検討されます。熱を冷ますだけではなく、寒冷蕁麻疹の場合は身体を温めるような漢方薬も使用されます。


生活面での注意点と改善案


蕁麻疹の予防にはそれを引き起こしているアレルゲンの除去が最も大切です。ホコリやダニといったハウスダストに対してアレルギーを持っている方は部屋や布団の掃除、雑誌や書類を放置しない、空気清浄器を使用するといった対策が有効です。


食品に対してのアレルギーがあるかわからない場合は食べた食品と症状の現れ方を記録した日記をつけることが有効です。食べ物以外にも化粧品や服用している薬などもチェックすると良いでしょう。


蕁麻疹(じんましん)の改善例


改善例1

患者は30代前半の女性・看護師。日常的に白衣と肌のすれ合う部分(首や腕など)に蕁麻疹が現れることに悩まれていました。お仕事柄、動き回ることも多いのでその度に患部がすれて、よりかゆみと赤みが増す悪循環に陥っていました。白衣の材質を変えたり、塗り薬を使用してもなかなか良くならず当薬局へご来局。


ご来局時も蕁麻疹のご症状があり、特にこすれやすい首の後ろには襟の形に沿ってやや膨らんだ蕁麻疹が見て取れました。特にご症状は夏場や日に当たると悪化しやすいという。この方には過剰な熱を抑える黄連や連翹を含む漢方薬を服用して頂きました。


服用から1ヵ月半が経つとイライラして仕事に集中できなくなるような強いかゆみはほぼ現れなくなっていました。調子が良かったので同じ漢方薬を継続して頂きましたが、数ヵ月が経っても症状改善における「最後の一歩」がうまくゆきませんでした。


やや治療が停滞している頃に生理前になると蕁麻疹が起こりやすいと伺ったので、気血の巡りをよくする漢方薬へ変更。新しい漢方薬に変更して2ヵ月が経過すると生理前の蕁麻疹にくわえて胸の張り感やイライラ感も含めて大きく症状が改善されました。この方には季節やご症状に合わせて漢方薬を調節しつつ、服用を継続して頂いています。


改善例2

患者は40代後半の男性・会社員。30代の頃から突然、口唇が大きく腫れるようになりましたが、数時間が経つと徐々に治まってくるので特に病院には行かず過ごされていました。しかし、40代になると徐々に腫れる頻度やヒリヒリとした不快感が多くなり皮膚科を受診。初めて血管性浮腫と診断されました。


皮膚科から抗ヒスタミン薬を処方されましたがうまく改善されず、他の抗アレルギーとの併用を開始。それでも改善は進まず、毎日服用する薬の量が増えてゆくことが不安になり当薬局へご来局されました。


ご来局されたときに血管性浮腫が現れている時の写真を見せて頂き、口唇が1.5倍ほど腫れあがっていることが確認できました。ご症状がある時は強い熱感を患部に覚え、時にはまぶたも腫れてしまうという。


この方には熱を鎮める力に優れた石膏や知母、水分代謝を改善する蒼朮や木通を含んだ漢方薬を服用して頂きました。漢方薬にくわえてやや多かったお酒の量を減らして頂き、あわせて辛いものを一緒に摂るのを控えてもらいました。


漢方薬を服用して半年が経過する頃には口唇が引っ張られるように腫れることはなくなり、ヒリヒリ感を覚えることもなくなりました。その後も症状が強く出てしまったときは抗ヒスタミン薬を併用して頂く形で血管性浮腫に悩まされることはほぼ解消されました。


おわりに


蕁麻疹はかゆみによって仕事や勉強の集中が途切れてしまったり、うまく睡眠がとれなくなってしまうこともしばしばです。最近はアレルギーに対して優れた西洋薬が多く開発されていますが、それでも蕁麻疹に悩まれている方は少なくありません。


漢方薬はその方の蕁麻疹が現れるパターンや症状の現れ方、皮膚以外の状態にも着目して西洋薬とは異なったアプローチから改善を目指してゆきます。慢性的な蕁麻疹や血管性浮腫にお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

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