相談の多い病気

ページ一覧

【 夜尿症(大人の夜尿症を含む) 】と漢方薬による治療

夜尿症(大人の夜尿症を含む)とは


夜尿症とは小学校入学以降も無意識のうちに夜間の排尿が行われてしまう病気です。おねしょは小学校入学前に起こるものであり、基本的に病気としては扱われません。夜尿症と似た遺尿症(いにょうしょう)という病名も存在します。これは夜間のみではなく、日中でも無意識に排尿してしまう病的状態を含んでいます。


定義上は病気と考えられる夜尿症ですが、小学校在学時でも5~10%程度の割合でみられるといわれています。したがって、決して珍しいものではありません。くわえて、年齢とともに改善傾向はありますが成人後でも夜尿症を患っている方は少なからずいらっしゃいます。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の原因


夜尿症を引き起こす主な原因としては膀胱の容量の問題(膀胱が小さい)、尿意があっても起床できない、排尿を抑えるホルモンであるバソプレシンの分泌不足などが挙げられます。これらの原因は身体の発育とともに改善してゆく傾向があります。くわえて相対的に頻度は少ないですが、腎臓の病気、てんかん、糖尿病などの病気が背景にあり夜尿症を引き起こしている可能性もあります。


逆に患っている方の性格や両親の育て方が原因となって夜尿症が起こっているわけではありません。夜尿症自体は非常に体質面に依存した病気といえます。したがって、夜尿症に対して過度にネガティブに捉える必要はありません。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の症状


夜尿症の症状は睡眠中の無意識な排尿以外にも、精神的な問題も含まれます。これは夜尿症を患っていることで自信を失ったり、積極性が低下してしまうことが挙げられます。結果的に外泊を含む旅行ができないなど、生活の質の低下が起こりえます。特に成人後の場合は仕事や家庭生活を営むうえで大きな問題となってしまいます。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の西洋医学的治療法


夜尿症の西洋医学的な治療は抗利尿ホルモン薬が中心となります。抗利尿ホルモン薬とは上記で登場したバソプレシンをもとに作られたデスモプレシンという成分を使用した薬で内服薬や点鼻薬としてもちいられます。この薬は腎臓で水分の再吸収を促し、尿を濃くする(尿量を少なくする)はたらきがあります。


抗利尿ホルモン薬以外では膀胱の収縮を抑える抗コリン作用を持ったトフラニール(一般名:イミプラミン)やアナフラニール(一般名:クロミプラミン)といった薬もしばしば使用されます。トフラニールとアナフラニールは三環系抗うつ薬と呼ばれるうつ病にもちいられる薬であり、その副作用である尿閉(尿が出にくくなること)を逆手にとって夜尿症にもちいられています。一方でこれらの薬は尿閉以外にも便秘や口の渇きという副作用もあるので、治療には慎重にもちいられます。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の漢方医学的解釈


漢方の立場から夜尿症を考えると、その背景には腎虚や気虚が大きく関わっているといえます。五臓六腑における腎は身体における水分代謝をつかさどっています。この腎の力がもともと弱かったり、弱まってしまうと夜尿症を含めた泌尿器系のトラブルが多くなります。


気は身体を活発化する生命エネルギーのような存在です。この気が不足している状態を気虚と呼びます。気は多くのはたらきを持っていますが、そのなかでも尿をしっかり身体内に保持するという役割も担っています。したがって、気虚に陥ると膀胱に充分な尿が保持できず、頻尿や夜尿症になってしまいます。


腎虚や気虚以外にも冷えや精神的なストレスによっても夜尿症を悪化させてしまうことがあります。したがって、全身的な症状と体質を含めて夜尿症の原因を考えてゆく必要があります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた夜尿症(大人の夜尿症を含む)の治療


漢方薬による夜尿症治療は腎の力を補うこと、つまり補腎が中心となります。補腎にくわえて気虚や散寒などを考慮してゆくケースが多いです。


具体的には身長や体重が平均よりも小さい、疲れやすい、顔色が青白いといった症状がみられる場合は腎虚と考えて熟地黄、鹿茸、山茱萸、山薬といった補腎薬を含んだ漢方薬がもちいられます。食欲不振、風邪をひきやすい、めまいや立ちくらみが目立つようなら気虚を改善する人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などの補気薬を配合した漢方薬が適しています。


上記を基本としつつ、冷え性(冷え症)や水のような薄い尿が多く出るようなら身体を温める桂皮、乾姜、細辛、呉茱萸、附子などの散寒薬も使用されます。これら以外にも精神的なストレスによって気が停滞しているようなら気を巡らす漢方薬も考慮する必要があります。特に成人後も夜尿症が続いているケースでは精神的な負担も強いので、心身両面のケアが大切になります。


生活面での注意点と改善案


夜尿症を改善するうえで生活習慣や対応方法の見直しはとても重要になります。まず、患っているのがお子さんの場合、怒ったり注意をするのは逆効果になります。夜尿症は本人の意思で改善できるものではないので「もっと頑張って!」と言われても本人にはどうすることもできません。逆にうまくいった朝は褒めてあげる、うまくゆかなかった場合はスルーするのが良いです。


お子さんが寝ているときに起こしてしまうのも逆効果になります。これは抗利尿ホルモンのバソプレシンが睡眠中の夜間により多く分泌されるからであり、それを妨げることになってしまうからです。同じ理由で夜遅くまで起きているのも好ましくありません。


水分の摂取に関しては、無理に撮る水分を減らすことはありません。特に熱中症の恐れがある夏季に水分制限するのは危険です。一方で夕食から就寝までの間は冷たい水分の摂り過ぎは避けましょう。そして、就寝前には必ずトイレに行き、しっかりと布団の中に入って身体を冷やさないようにする習慣をつけてください。


くわえて、利尿効果のあるカフェインを含んだ緑茶、紅茶、コーヒー、喉が渇きやすくなる濃い味付けの食べ物(塩分の高い食べ物)は日常的に避けたほうが良いです。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の改善例


改善例1

患者は小学校4年生の男児。夜尿症が治らず、病院で排尿を知らせるブザーを使用した治療も受けましたが不調。病院からは薬の服用も勧められましたが副作用が心配でそれは避けることに。何もしないのも落ち着かないということで漢方薬の服用を希望し、当薬局へご来局。


お母様と一緒にご来局され、まず身長と体重を伺うと同年齢のお子さんと比較するとやや低め。夜尿症以外の気になるご症状としては手足に冷え、腹痛と軟便があるとのこと。あまり食に対して積極性はなく、お母様曰く「食べるものがなければ食べないで遊び続けている」という。


この子にはまず食欲や体力を向上させる人参や黄耆を含んだ漢方薬を服用していただきました。しっかりと服用できるかやや不安もありましたが特に問題なく漢方薬開始から2ヵ月が経ち、ほぼ毎日だった夜尿症の頻度は半分程度に。登校前に起こりやすかった腹痛や軟便はすっかり現れなくなりました。


ここで漢方薬を腎の力を底上げする地黄や山茱萸を含むものに変更。変更から半年が経つと夜尿症が起こることはなくなりました。季節は冬になっていましたが、手足が寒いと訴えることもなく、胃腸の調子も良い状態が維持されていました。その後、少々の中断期間がありましたが服用を継続され、修学旅行も無事に行くことができました。


改善例2

患者は20代後半の男性・書籍編集者。夜尿症が子供のころから続いており、病院での治療も行っていました。代表的な治療薬であるアナフラニールの服用によって排尿してしまう頻度は下がる一方、副作用の日中のふらつきや口の渇きが強く出てしまい続けることができませんでした。病院での治療以外にも治療法がないかを調べた末、当薬局へご来局。


より詳しくご様子を伺うと、症状は冬に悪化する傾向があるという。夜尿症以外のご症状としては下半身の冷え、疲労感、肌の乾燥などがありました。この方には身体を温める桂皮や附子、腎の力を補う地黄などから構成される漢方薬を服用していただきました。くわえて、お酒を含めた冷たい水分を控えていただき、腹巻などを利用して身体を冷やさぬようお願いしました。


漢方薬の服用から半年が経過すると、一年を通じてあった腰から下の冷えはなくなり、夜間の排尿も半分程度に減りました。その一方でお仕事が繁忙期に入り、疲労感がとても強いということで鹿茸と人参を含む生薬製剤を併用していただきました。併用を開始して3ヵ月程度が経つと、なかなか抜けなかった重だるさも軽減されたとのこと。夜尿症の方も新しい組み合わせの方が良いということもあり、繁忙期後も併用を継続へ。


漢方薬開始から通算で2年が過ぎると、よほど疲れが溜まったり冷えが強くない限りは夜尿症の症状は出なくなり、体調全般が安定しました。その後、一旦服薬は終了しましたがご結婚を機に再開。服用していない時も夜尿症に悩まされることはほとんどなかったとのことですが「お守りのかわり」と疲労回復を兼ね、改めて服用していただいています。


おわりに


夜尿症は患っている方が少なくない一方で、西洋医学的な治療法が限られている病気といえます。夜尿症は精神的な負担だけではなく、外泊を伴う旅行に消極的になってしまうなど生活の質を大きく下げてしまうものです。


漢方薬をもちいた夜尿症の治療は目立つ副作用もなく、お子さんでも安心して行えるメリットもあります。さらに夜尿症以外の困っていらっしゃるご症状も同時に改善を行える可能性があります。慢性的な夜尿症にお悩みの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

このページの先頭へ