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【 チック症(トゥレット症候群を含む) 】と漢方薬による治療

一二三堂薬局とチック症(トゥレット症候群)


当薬局では長年、チック症に有効な漢方薬の研究を重ねてまいりました。その理由はふたつあります。ひとつはチック症はお子様にとても多い病気であり、多くのご両親が西洋薬の副作用を心配して充分な治療ができないことに悩まれているからです。そしてもうひとつは漢方薬はチック症の改善にとても有効ということを経験的にも実績面でも知っているからです。


このページではチック症とトゥレット症候群に対する漢方治療について解説させて頂きます。当薬局の情報につきましてはページ上段のアイコン、または下記のリンクをご覧ください。


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チック症とトゥレット症候群とは


チック症とは無意識に筋肉を動かしてしまう病気であり、それは「無意識」であるがゆえに本人の意思では止められない点がチック症の特徴です。具体的には素早いまばたき、首ふり、顔をしかめる、肩を上下させるといった動作が現れます。他にも咳払い、鼻を鳴らす、奇声を上げるなどの症状が見られることもあります。


チック症はお子様に多い病気です。したがって、このホームページもお子様を主な対象として考えてゆきます。発生頻度はおおよそ10~20%といわれており、チック症は決して珍しい病気ではありません。その発症年齢については統計的に5~9歳ごろがピークになります。したがって、小学校低学年の1クラスにおいて数人は必ず発症している計算になります。


チック症が数年経っても消えず、むしろ症状が増加・悪化して慢性化してしまった場合はトゥレット症候群と病名が変わります。トゥレット症候群は多くの場合、10歳前後で症状の強さのピークを迎えます。その後は徐々に回復して中学校卒業時くらいにはほとんどの症状が鎮静化するといわれています。つまり、トゥレット症候群はチック症という病気を構成する一症候群、慢性化したチック症ということができます。


チック症は既に述べたとおり、よく見られる病気でしたがトゥレット症候群の発症頻度は0.05%と非常に低いことも知られています。したがって、チック症が発症したからといってトゥレット症候群になる(慢性化する)と過度に心配する必要はないでしょう。


チック症の原因


過去においてチック症の原因は家庭環境であるとする考え方が一般的でした。つまり、「子どもへの教育やしつけが厳し過ぎた」「母親が愛情を込めて育てなかった」などの言説です。残念ながら、今日でも一部(医療従事者や教職員を含む)ではそのような考え方が残ってしまっています。


現在ではチック症に関する研究も進み、いくつかの神経伝達物質、主にドパミンやドパミンを受け取るレセプターの異常がチック症に強く関連していることがわかってきました。しかしながら、まだ完全にチック症の原因は解明されていません。


上記より、チック症は体質によるところが大きく、決して家庭環境に問題があったから発症するような病気ではないことが分かってきたのです。その一方でチック症はストレスが蓄積したり緊張する場面で悪化することも知られています。したがって、チック症は体質的要因がその根幹にあり環境要因がそれに対して影響を及ぼしているという考えが多数派となっています。


チック症の症状


チック症の症状は大きく分けて運動性チック症と音声チック症に分けられます。実際的には運動性チック症のみが出る場合、音声チック症のみが出る場合、そしてふたつとも出る場合やその他の症状が混ざって現れるなどさまざまです。


運動性チック症

具体的な運動性チック症の症状としては顔や口の筋肉を動かす、首を振る、肩をすくめる、まばたき、口の周りをなめる、ジャンプする、身体をビクつかせるなどが挙げられます。顔や口の片側の筋肉だけを動かすことで、しばしば「ひょっとこ」のような顔つきになると表現される方もいらっしゃいます。


これらの症状は専門的には不随意運動と呼ばれます。つまり、意識していない状態で出てしまう動きです。意識していないので症状が出ている本人に「動くな!」「止めろ!」と言っても効果は無く、むしろ緊張感を高めてしまい逆効果になってしまいます。


音声チック症

具体的な音声チック症の症状としては鼻を鳴らす、奇声を発する、「あ、あ、あ」のように同じ言葉を繰り返す、「バカ!」「死ね!」「クソ!」などの攻撃的で品のない言葉や「おっぱい」「ちんこ」といった性的な言葉を発する(汚言症)などが挙げられます。


これら音声チック症も運動性チック症と同様に不随意的なものなので意識して止めることはできません。音声チック症はその音によって周囲から目立ってしまうだけではなく、汚言症は会話の前後関係に依存しない形で出てしまいます。したがって、友人関係などに代表される人間関係に問題が生じてしまわぬよう注意が必要です。


その他の症状

チック症の症状は多様であり、運動性チック症とも音声チック症ともいえないものがあります。具体的には特定のものに強くこだわる、髪の毛やまつ毛を抜く抜毛症(ばつもうしょう)、口の中や唇をかむ、皮膚をはがす、匂いをかぐ、突然の怒り、暴力的な行為などの症状が挙げられます。これらの症状の一部はチック症ではなく単なる癖である場合も多く、その区別が難しいこともあります。


チック症の症状ではありませんが、しばしばチック症とADHD(注意欠陥・多動性障害または注意欠如・多動症)が一緒に現れやすい、合併しやすいことが知られています。漢方薬をもちいたADHDの治療につきましては こちらをご参照ください。


チック症の西洋医学的治療法


チック症が慢性化して学校生活を送る上で問題があるような場合は薬物治療の対象となります。もっとも頻繁に使用されるのはドパミン受容体阻害薬であるセレネース(一般名:ハロペリドール)、リスパダール(一般名:リスペリドン)、ウインタミン(一般名:クロルプロマジン)、オーラップ(一般名:ピモジド)、そしてドパミン量のバランスを調節できるエビリファイ(一般名:アリピラゾール)などです。


これらはドパミンの過剰なはたらきを抑制することでチック症の症状を軽減します。その一方で眠気、筋肉のこわばりと硬直、眼球運動障害、嚥下障害などの多彩な副作用が存在します。これらの副作用はその原因と考えられる脳の部位の名前から錐体外路(すいたいがいろ)障害や錐体外路症状と呼ばれます。くわえて特に意識しない口や顔の動きを遅発性ジスキネジアとも呼ばれます。


ドパミン受容体遮断薬は西洋医学的には実績のある治療薬であり、近年では副作用の少ないタイプの治療薬も開発されています。しかしながら、上記のような副作用はゼロではないので慎重な治療が求められます。


ドパミンとは異なる神経伝達物質であるセロトニンのはたらきを活性化させるパキシル(一般名:パロキセチン)などのSSRIと呼ばれるカテゴリーの薬、同じく神経伝達物質であるGABAのはたらきを高めるベンゾジアゼピン系の抗不安薬であるリボトリール(一般名:クロナゼパム)、セルシン(一般名:ジアゼパム)、自律神経の興奮を抑えるカタプレス(一般名:クロニジン)なども用いられることがあります。


上記の薬も副作用として吐気、食欲不振、腹痛、下痢といった消化器系障害、ふらつきや頭重感などの感覚異常が出る場合もあります。


薬物療法以外にもカウンセリングを中心とした心理療法が用いられます。カウンセリングではチック症がどのような病気なのかを両親と一緒に理解し、建設的な治療を行う環境づくりを行います。


チック症の漢方医学的解釈


チック症の症状は筋肉の動きが制御できないことが根本にあります。漢方医学において筋肉の動きは肝(かん)がコントロールしていると考えます。漢方医学の理論における肝は筋肉の動きだけではなく、眼のはたらきを維持したり、精神や感情を安定化させるはたらきを担っています。この肝のはたらきが何らかの原因で失調した場合は筋肉の動き、眼の機能、気持ちの乱れなどが起こってしまいます。


筋肉のはたらきが失調してしまうと運動性チック症や一部の音声チック症に繋がることがわかります。チック症特有のまばたきも筋肉と眼のはたらきの失調に寄るところが大きいでしょう。気持ちの乱れはイライラ感、理由のない怒り、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発します。したがって、漢方医学的には肝に注目してチック症の治療を行うことになります。


さらに肝以外にも、肝と関連深い腎(じん)への配慮も必要な場合があります。腎は成長や生殖などを司る精(せい)を蓄えています。肝腎同源(かんじんどうげん)といって、肝が失調すると腎のはたらきも弱まり、逆に腎の精が少なかったりすると肝のはたらきも弱まってしまいます。


精は成長に欠かせないものであり、成長障害、学習障害、低身長や低体重などの精不足と考えられる症状がチック症と一緒にあるようならば、漢方薬を用いてそれらに対する治療も行われます。

チック症の症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでしたが、根本的になぜ肝が失調してしまったのかを考える必要があります。肝は多くの場合、精神的なストレスによってその力が低下してしまいます。したがって、まずはお子様の精神的なストレスがないかを考える必要があります。経験的には受験によるストレス、学校のクラス替えに伴う環境の変化、家庭環境の変化などが多いと感じます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたチック症の治療


上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いたチック症の治療は肝をいたわり、その機能を回復させることが中心となります。肝の力の衰えは肝にためられていた血(けつ)が消耗すると起こりやすく、それを補うことがチック症治療の中心に据えられます。


血を補う生薬である補血薬(ほけつやく)としては地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが代表的です。特に芍薬は筋肉の過緊張を和らげるはたらきもあるのでチック症には最適の生薬といえます。


さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える理気薬(りきやく)も重要です。代表的な理気薬としては柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などが挙げられます。他にも筋肉のけいれんやふるえを鎮める熄風薬(そくふうやく)である釣藤鈎、天麻、竜骨、牡蠣、腎の精を補う補腎薬(ほじんやく)である鹿茸なども漢方薬を構築する上で重要視されます。


これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


生活面での注意点と改善案


チック症やトゥレット症候群の症状は本人が意識して止めることが難しいという点が特徴として挙げられます。したがって、無理に現れている症状をやめさせたりすることはお子さんのストレスを増大させ、逆効果になってしまうでしょう。


症状が出ていてもあえて無視することが必要になります。しばしば、「温かい無視」と呼ばれますが、まさに文字通りの対処法です。温かい無視以外にも、おとなしくできている時には褒めるという対応も良いとされています。


お子様への対応だけではなく、学校への対応も場合によっては必要になります。教職員も多くの場合は基礎的なチック症の知識(「チック症の症状をむやみに注意することは逆効果」
「無意識に起こっている症状で、意識して止めることはできない」など)はあるはずですが、保護者面談時などにチック症のことを伝えておくことも大切です。


チック症の改善例


改善例1

患者は小学6年生の男児。小学校四年生の頃から顔をゆがませたり首を左右に素早く振るなどのチック症状が現れ出した。お母様は最初、ふざけているのか癖なのかわからず症状に対して注意をしていましたが、チック症の症状は治まることなく続いていました。


その後、チック症の症状を同級生に指摘されたことをきっかけに時々学校を休むようになってしまいました。当薬局へは昔からお母様自身が月経困難症で漢方薬を服用しており、息子様にも漢方薬を試そうと考えて親子でご来局。


詳しくお話を伺うと顔や首の動かしといった典型的な運動性チック症の症状に加えて、咳払いや「うっ、うっ」という言葉を発する音声チック症も見られました。緊張しやすい性格なのか、必要以上に肩が高く上がり身体にとても力が入っている雰囲気を感じました。


息子様には心身の緊張を取り除くために柴胡、芍薬、厚朴などから構成される漢方薬を服用して頂きました。そして、お母様には症状を注意したり怒ったりすることは控えるようにお願いしました。


漢方薬服用から4ヵ月が経った頃には大きく体を動かす頻度は減り、続いていた咳払いもあまり見られなくなっていました。この頃、お母様が「息子がまつ毛を抜いて食べてしまう癖がなくなった」とおっしゃられました。これら抜毛症や抜毛癖(ばつもうへき)と呼ばれるものは経験的にチック症と併発しやすいと感じています。


抜毛症が緩和してきたことも含め、心身の過緊張状態が解けてきたと考えて同じ漢方薬を継続して頂きました。そして、服用開始から10ヵ月が経過した頃には運動性チック症も音声チック症もきれいに消失していました。現在はまれにプレッシャーがかかる場面になるとまばたきが多くなるとのことで、同様の漢方薬を継続して服用して頂いています。


改善例2

患者は中学2年生の男児と30代後半のお母様。息子様のチック症で悩んでいたというお母様が息子様と一緒にご来局。症状としてはまばたきと首を左右に振る動きなどでしたが、それ以上に気になったのがお母様の状態でした。こちらが息子様に症状を伺うと、
その答えが返ってくる前にお母様がササッとご返答。


お母様いわく「中学校に進学して、友人との人間関係がうまくいかなかったのがチック症の原因だと思う」とのこと。それは冷静に語るというよりも強い焦燥感を帯びたものであり、息子様からはやや緊張している雰囲気を感じました。


この様子からお母様の指摘が正しい部分もあると思いましたが、今はお母様の姿自体もまたチック症の原因となってしまっている面があると感じられました。そこで、このケースでは息子様だけではなくお母様も一緒に気持ちを落ち着ける漢方薬を服用して頂くことにしました。


お母様にも漢方薬を勧めると、最初は怪訝な顔をされましたが「母子同服(ぼしどうふく)」という言葉があることを伝えて納得して頂きました。「母子同服」は子供の病気を治すために同じ漢方薬を母親にも飲んでもらうという意味であり、お母様の心配がお子様のプレッシャーとなっている場合などに適した治療法です。お母様自身のお話も伺ってゆくとイライラ感や気分の浮き沈みなどに悩んでいたとのこと。


それぞれ漢方薬を服用しはじめてから5ヵ月が過ぎた頃になると、お母様も気持ちが落ち着いてきたようで「ついつい、症状が出るたびに注意していましたが、今は静観することができるようになりました」とおっしゃられました。息子様の方はまだ、まばたきや身体の動きはあるものの、かなりの改善を感じられました。


これを良い傾向と捉えて、同じ漢方薬を継続して服用して頂くことにしました。漢方薬をはじめて1年が経った頃には息子様の症状の大半は鎮まり、漢方薬は無事にご卒業。逆にお母様が「この漢方薬を服用しているとイライラしなくなる」ということで、現在も継続して頂いています。


改善例3

患者は20代前半の男子大学院生。幼少期より首を動かしたり咳払いをするといったチック症がありましたが、年齢が上がるとともに症状も緩和。しばらくチック症のこと自体忘れていましたが研究室での閉塞した生活や就職活動の開始をきっかけにチック症が再発。


病院から抗不安薬が処方されるもふらつきと吐気が強くて服用できなかったとのこと。他の薬を試しても生活に支障が出てしまい服用を断念。何気なくネットでチック症に関する学術論文を閲覧していると漢方薬が有効という論文を見つけて服用を決意。その後、当薬局のホームページを見つけてご来局へ。


伺ったご症状の経過から精神的ストレスによって五臓における肝のはたらきが失調してしまったと考えました。そこでまずはストレスを緩和する柴胡、筋肉のはたらきを整える芍薬、気持ちを鎮める竜骨などから構成される漢方薬を服用して頂きました。


服用から3ヵ月が経過した頃になると、身体を不規則に動かす場面が少なくなり、それからさらに数ヵ月経った頃には咳払いや時々みられた無意識の発声も見られなくなっていました。無事に電機メーカーに就職された現在でもストレス緩和と健康維持のためにうまく気を流しつつ補うことにも比重を置いた漢方薬を継続服用して頂いています。


改善例4

患者は小学2年生の女児。小さいころから2歳年下の妹とケンカが絶えず、癇癪(かんしゃく)を起こしてご両親を困らすことが多かった。くわえて小学校入学直後からまばたきと肩を上下させるチック症が現れ始めました。お母様は治療を行うべきか迷っているとき、行きつけの鍼灸院で漢方薬を勧められて当薬局へご来局。


娘様の身長と体重を確認すると、どちらの数値も年長さんくらいの水準でとても小柄。お母様曰く「偏食があり食も細くてあまり体力がない。でもいつもイライラして熱がっている」という。これらのご様子から娘様には腎の力を補い、適度に身体をクールダウンする漢方薬を服用して頂きました。


漢方薬開始から3ヵ月が経ち、お母様のご様子を伺うと漢方薬は嫌がらずに服用できているとのこと。チック症は変化がないが、帰宅後に必ずしていた昼寝をしなくなり食欲が出てきたという。漢方薬はこれまでのものを減量し、代わりに心身をリラックスさせる漢方薬を追加しました。


新しい漢方薬になって2ヵ月が経過すると妹とおもちゃを取り合うこともなくなり、情緒が徐々に安定してきました。お母様も姉妹に注意する頻度が減ってとても助かるとおっしゃられていました。その後、イライラ感が薄れてくるのと比例して運動性チック症も見られなくなりました。


学年も3年生となり、だいぶ姉らしくなってきたとご両親も喜んでいました。漢方薬については服用しているとご本人が「調子が良い」ということで内容に調節を行いながらも継続されています。


おわりに


近年、チック症のご相談が非常に増えた印象があります。おそらく背景には西洋薬を服用させるのに抵抗を感じるご両親の気持ちがあるのではないでしょうか。漢方薬は穏やかではありますが、西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。さらに西洋薬のような目立った副作用の心配もありません。


当薬局では西洋薬を服用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしばご来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、症状が好転する方がとても多くいらっしゃることから、チック症と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、チック症にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

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