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【 書痙 】と漢方薬による治療

一二三堂薬局と書痙

当薬局では長年、書痙を治療する漢方薬の研究を重ねてまいりました。
その理由としてはまず書痙や局所性ジストニア全般に対して有効な西洋医学的治療法が確立されていないことが挙げられます。 その一方で当薬局で調合する心身の緊張感を緩和する漢方薬を用いて書痙や局所性ジストニアから回復された方がとても多くいらっしゃいます。

このページでは書痙と局所性ジストニアに対する漢方治療について解説させて頂きます。
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書痙とは

書痙(しょけい)は筋肉の動きに問題が生じる局所性ジストニアの一種です。 ジストニアとは、意識していないのに筋肉が収縮・緊張してしまい動作が止まってしまう症状を指します。 「意識していないで起こる」ということを「不随意(ふずいい)」ということもあり、ジストニアは不随意運動と呼ばれることもあります。したがって、 書痙とは意識していないのに手という局所(一部分)に筋肉の緊張が高まり筆記が困難になるという珍しい病気といえます。

書痙の大きな特徴としては筋肉の緊張によって筆記に支障はきたすのですがそれ以外の動作は問題なく可能という点です。 例としては箸を使って食事を摂る、キーボードやマウスを扱う、実験器具を使用して細かい作業を行うことなどは多くの場合は可能です。

書痙は局所性ジストニアの一種であると同時に職業性ジストニアの一種でもあります。 職業性ジストニアは特定の職業柄の動作にまつわる筋肉に緊張が起こり、仕事に支障をきたしてしまうジストニアです。 書痙もしばしば、頻繁に文字を書く職業の方(教師、速記者、小説家、設計士、会計士など)や受験生の方が発症しやすい傾向にあります。 他にもピアニスト、ギタリスト、バイオリニストの方などが楽器の演奏だけできなくなってしまう症例や、ゴルファーの方がパッティングのみできなくなってしまうという症例もあります。 (ゴルファーに起こる局所性ジストニアは「イップス」とも呼ばれています)

本項目では書痙を中心にしつつ、他の局所性ジストニアにも対応できる形で解説を行ってゆきたいと思います。


書痙の原因

書痙の原因についてはまだ明確に解明されていません。しかし、脳内の運動をコントロールする部分の不調によるものという説が濃厚です。 さらに特定の神経伝達物質(アセチルコリン、ドパミン、セロトニンなど)の働きを調節する薬で症状を緩和することから、逆説的にそれらが書痙発症に関与している可能性が指摘されています。

書痙に限らず職業性ジストニアを患ってしまう方の特徴としては完璧主義、真面目、几帳面という点が挙げられます。 したがって、体質以外にもストレスを真正面から受けてしまう性格的な要因もしばしば指摘されます。


書痙の症状

既に述べたとおり、書痙は手の筋肉の過緊張によって筆記のみに支障が出る病気です。 一言で書痙といっても症状の現れ方には個人差があります。どんな時にも筆記障害が出てしまう方、特定の場面(試験や人目が気になるような場面での署名など)で筆記障害が出てしまう方もいらっしゃいます。 筆記障害の内容に関してもまったく書けなくなってしまう方、徐々に緊張が高まってしまい書けなくなってしまう方、書けるが徐々に字が小さくなってしまう方などさまざまです。


書痙の西洋医学的治療法

書痙の治療は薬物療法が中心的に行われており、場合によっては心理療法も併用されます。 薬物療法は筋肉の震え(専門的には「振戦(しんせん)」と呼びます)を抑えるトリヘキシフェニジル(主な商品名:アーテン)、 アロチノロール(主な商品名:アルマール)、クロナゼパム(主な商品名:リボトリール)などが中心的に用いられます。 それ以外にも精神的ストレスによって症状が悪化する場合はパロキセチン(主な商品名:パキシル)、ジアゼパム(主な商品名:セルシン)、エチゾラム(主な商品名:デパス)、ロラゼパム(主な商品名:ワイパックス)などが用いられます。 経口薬以外にも筋弛緩作用があるボツリヌス毒素を加工した薬を手の筋肉に注射したり、脳の手術といった外科的治療も試みられています。

このように多面的な治療が西洋医学においてなされますが、書痙に対して効果的な治療法が確立しているとはいえないのが現実です。その理由として書痙発症のメカニズムにおいてまだ不明な点が多いことが挙げられます。


書痙の漢方医学的解釈

書痙の症状は筋肉の動きがうまく制御できないことが根本にあります。漢方医学において筋肉の動きは肝(かん)がコントロールしていると考えます。 漢方医学における肝は筋肉の動きだけではなく、眼の働きを維持したり、気持や感情を落ち着ける働きを担っています。 この肝の働きが何らかの原因で失調した場合は筋肉の動き、眼の働き、精神の安定化に問題が生じてしまいます。 筋肉の働きの失調は書痙やチック症などに繋がります。そして、気持ちの乱れはイライラ感、理由のない怒り、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発します。

したがって、漢方医学的には肝に注目して書痙やその他の局所性ジストニアの治療を行うことになります。 書痙の症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでしたが、根本的になぜ肝が失調してしまったのかを考える必要があります。 肝は多くの場合、精神的なストレスによって働きが低下してしまいます。したがって、精神的ストレスが多い場合はそれに対するケアも必要になります。

(より詳しい漢方用語はこちらをご参照ください)


漢方薬を用いた書痙の治療

上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いた書痙の治療は肝をいたわることが中心となります。 肝の力が衰えるということは肝にためられていた血(けつ)が消耗するということであり、それを補うような治療が中心に据えられます。(これを「肝血を補う」「柔肝(じゅうかん)する」と言います) 血を補う生薬(補血薬)としては熟地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。特に芍薬は筋肉をリラックスさせる働きも持っているので書痙治療の漢方薬にはしばしば含まれます。

さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える生薬(理気薬)、具体的には柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子なども用いられます。 他にも筋肉の緊張や震えを鎮める釣藤鈎、気持ちを鎮める竜骨、牡蠣などの生薬も併用されることが多いです。

これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。 したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


生活面での注意点と改善案

書痙は体質面の他に環境面の影響も受けることが知られている病気です。 特に過度な精神的ストレスは心身ともに緊張感を高めてしまうので、書痙をはじめとするジストニアを患っている方は避けるべきです。 しかしながら、そう簡単に精神的なストレスを回避するというのも難しいものですので、うまくストレスを解消する方法を取り入れるのが建設的かもしれません。

心身ともにストレスを解消するには軽運動が最適です。ウォーキングや軽い水泳などが良いでしょう。 書痙の発症を「心の非常停止装置」が働いたと考え、可能な限り抱え込まなくてもよい仕事などには手を付けないようにするのが良いでしょう。 心に余裕を持つことが一番の「薬」かもしれません。

経験的に書痙の回復期に入った方は「別に字が書けなくても、とても困ることは意外と少ない」「パソコンを使えば直筆でなくても大体のことがこなせる」 「字が書けないのは不便だが、別に死ぬようなことはない」と思えるようになっている場合が多いです。書痙をひとつの契機と捉え、リラックスできるライフスタイルへの見直しを行って頂ければと思います。


書痙の改善例

改善例1

患者は20代後半の男性・製薬会社勤務の研究職。2年前から手の震えと硬直により字を書くことが困難になった。 より具体的には震えによって字がきれいに書けない、手の緊張によって徐々に字が小さくなってしまう、筆記自体に相当な時間がかかるなどの症状に悩まされはじめました。 字を書くこと以外に実験器具やパソコンを操作することはできるという。大学病院を受診し、心療内科で精神安定剤を服用しましたが慢性的なめまいや眠気に悩まされ治療は中断。 当薬局にご来局した当時はさらに不眠症や強い肩凝りも発症されていました。問診からは完璧主義・生真面目・責任感が強いといった一面が伺えました。

これらの症状と体質の全体像から柴胡を中心とした気の流れをスムーズにする生薬と、芍薬や葛根などの筋肉の緊張を和らげる生薬から構成される漢方薬を服用して頂きました。 服用後、波はあるものの段階的に筋肉の緊張がほぐれ、服用から1年が経つと「前よりも字を書くのが本当に楽になった」とのこと。 現在、自覚症状は少々残るものの、筆記スピードは格段に上がり、字が小さくなってしまうことも少なくなっていました。 「漢方薬を飲んでいると肩凝りも楽になり、睡眠も深くなった」ということで、今も健康維持も兼ねて漢方薬の服用を継続して頂いています。

改善例2

患者は40代前半の男性・音楽家。この方はバイオリンの演奏を生業として多忙な日々を送っていらっしゃいましたが、ある日突然、指先が硬直して動かなくなり演奏できなくなってしまいました。 さまざまな病院や診療科を訪ねましたが原因は分からず、精神安定剤や筋弛緩剤を服用しても症状は治まりませんでした。 不思議とバイオリンの演奏以外の筆記やピアノの演奏などは可能で、他者に自身の症状を理解してもらえないことが二次的なストレスとなっているとのこと。 そんなときにコンサート会場に近かった当薬局にふらりとご来局されました。

この方のご症状は典型的な職業性ジストニアと考えられました。漢方薬はストレスを緩和する柴胡や厚朴、筋肉をリラックスさせる芍薬、葛根、筋肉の痙攣などを静める釣藤鈎などから構成される漢方薬を服用して頂きました。 漢方薬を服用されてすぐに指先から首筋にかけて筋肉が柔らかくなった印象を受けたとのことですが、演奏ができるようには至りませんでした。

そこで無理は承知でしたがバイオリン演奏から距離を置くことをお願いしました。 それから漢方薬の微調整を数回繰り返して半年以上が経過する頃になると、症状による焦燥感やイライラ感は徐々に鎮まってゆきました。 そしてある日、無性にバイオリンが弾きたくなり、試しに弾いてみたところ以前とほとんど同じようにとてもスムーズに演奏できたとのこと。 漢方薬を服用しだして丸2年ぐらいが経過した頃には発症前と全く変わらない演奏が可能となりました。現在も「お守り代わりみたいなもの」として、さらに予防薬として漢方薬服用を継続されています。


おわりに

近年、書痙をはじめとする局所性ジストニアを患われている方がとても多くなった印象を受けます。 やはりストレス社会と呼ばれる今日の世相を反映しているのかもしれません。 書痙を患いうと今まで問題なく行えてきた「書く」という動作ができなくなり、非常に不便な生活を強いられてしまいます。 マイナーな病気でもあるので周囲の理解を得るのも難しく、孤独感を深めてしまう方もいらっしゃいます。

漢方薬は西洋薬とは異なった角度から書痙に対してアプローチするものです。 当薬局では西洋薬を服用してもなかなか症状の改善が見られなかった方がしばしばご来局されます。 そして漢方薬を服用し始めてから症状が徐々に好転する方がとても多くいらっしゃることから、書痙と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。 是非一度、書痙にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

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