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【 ドライアイ(シェーグレン症候群を含む) 】と漢方薬による治療

ドライアイとシェーグレン症候群について

ドライアイとはその名の通り、目の乾燥を指しています。 ドライアイはしばしば乾性角結膜炎とも呼ばれますが、一般的にはドライアイという名前が浸透しています。 しかしながら、ドライアイは厳密に言えばただ単に乾燥感を覚えるだけではなく、診断を確定させるためにはいくつかの基準 (ドライアイならば涙の量を測定する試験や特殊な抗体の検出など)が存在します。

しかしここでは広義のドライアイとして目の乾燥がある状態として扱ってゆきます。 ドライアイの症状としては涙が出ない、目が疲れやすい、目が痛い、目が痒い、スムースに目が動かしにくい、目やにがたまりやすい、 過度にまぶしいなどの症状が代表的です。眼球を覆う涙が不足することでその表面が傷つきやすくなることもあります。 このような症状はディスプレイや書類を読み込むときに非常に負担となるために仕事上での大きなストレスにもなりえます。

ドライアイに代表される乾燥性の症状が現れている方の一部はシェーグレン症候群の可能性があります。 下記で紹介するシェーングレン症候群では「眼だけではなく全身が乾燥した状態になる」というのが最もイメージしやすい病態といえるかもしれません。 シェーングレン症候群患者数は約10万人と言われており、ドライアイの症状だけを対象とすると100万人以上とも約1000万人とも言われています。




シェーグレン症候群とは

スウェーデンの眼科医であるシェーグレンが1930年代に報告したことにちなんで「シェーグレン症候群」という名前が付けられました。 日本では1970年代後半から徐々に知られるようになったようです。しばしばシェーングレン症候群という表記も見受けられますがシェーグレン症候群が一般的です。 シェーグレン症候群を患っている方々の正確な人数の把握は難しいですが、国内では約10万人以上であり、圧倒的に女性が多いという特徴があります。 年齢的には50代が多いとされていますが、小児から高齢者まで幅広く発症することもまた知られています。

シェーグレン症候群は代表的な自己免疫疾患の一つです。自己免疫疾患とは本来は外敵に対して攻撃を行うべき免疫系が何らかの理由 (多くの場合は不明な場合が多いです) によって自分自身を攻撃してしまう疾患です。 シェーグレン症候群もまた、根本的な原因は不明であり、涙腺と唾液腺に対して免疫系が攻撃を行うことによって多彩な症状が現れます。 涙の分泌を行う涙腺と唾液の分泌を行う唾液腺が攻撃を受けて、機能しなくなることによって後述するドライアイやドライマウスなどの症状が現れるのがシェーグレン症候群の最大の特徴です。 本ホームページでもこれらドライアイとドライマウスを中心に紹介してゆきます。

上記の通り、シェーグレン症候群は自己免疫疾患であり、ドライアイやドライマウスなどのシェーングレン症候群特有の症状のみが現れる原発性シェーグレン症候群と、 他の自己免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデスや関節リウマチ(リューマチ)などと一緒に発症する二次性シェーングレン症候群の2種類に大別されます。




ドライアイとシェーグレン症候群の西洋医学的治療法

シェーグレン症候群(ドライアイやドライマウス)は対処が困難な自己免疫疾患の一種であること、 さらに明確な原因が不明ということもあって根本的な治療法は確立されていません。 したがって、乾燥した状態に潤いを与えてゆく、乾燥による不快感を解消するという対処療法が基本戦術となります。

ドライアイの場合は保湿作用が認められているヒアルロン酸が含まれた目薬が最も頻繁に用いられます。 それ以外にも目の機能維持と保湿効果が認められるビタミンAの点眼薬も用いられます。 さらに自己血清を薄めて人工涙液として用いるという治療法も徐々に広がっています。 ドライマウスに対しては粘液分泌を促進するブロムヘキシンやアネトールトリチオンが用いられます。 さらにメチルセルロースを含んだ人口唾液も症状の緩和に用いられます。 ドライマウスは症状の緩和のほかに、唾液が不足することで虫歯や歯周病が発生しやすくなるので、 イソジンガーグルなどで殺菌を心掛けることも重要となってきます。




ドライアイとシェーグレン症候群の漢方医学的解釈

ドライアイやシェーグレン症候群には漢方医学的にも多くの原因が考えられます。 したがって用いられる漢方薬の種類も多岐にわたります。 しかしながら、現代人におけるドライアイやシェーグレン症候群の原因としては肝(かん)に蓄えられているはずの肝血(かんけつ) の不足が多く関与していると考えられます。

肝血の主な働きは全身の臓器に栄養を与え、身体を潤いで満たすことです。 肝血が不足すると肝をはじめとする臓器の機能が低下し、全身が乾燥傾向となります。 肝の働きには上記で紹介した通り、目の機能維持があり、それが失調すると目のかすみ、 めまい感、目の疲労、目の痛み、過度なまぶしさ、そして目の乾燥、つまりドライアイが起こります。

さらに肝血は全身を潤す作用もあるので肝血の不足はドライアイをさらに進行させ、さらにドライマウスや皮膚、気道などの乾燥を引き起こします。 ちなみにこの肝血が不足した状態が続くと上記以外の症状として憂鬱感、緊張感、不安感、不眠、イライラ感などの精神症状、喉や胸の閉塞感や不快感、 吐き気、筋肉の緊張や痙攣などのチック症状、月経異常、性機能障害(ED)、高血圧などの身体症状も現れます。

では肝血の不足はどのようにして起こるのか。これも十人十色であり、なかなか断定することは難しいです。 しかしながら、肝は精神的なストレスに弱い臓器であり、精神的ストレス下に長時間晒されると徐々に肝血を失うことになります。 したがって、ドライアイの症状が現れた場合、精神的ストレスが過度に加えられていると考えて積極的にリラックスすることは非常に重要です。




生活面での注意点と改善案

重複になりますがドライアイ、そしてシェーングレン症候群はその原因がまだ不明なため、日常生活を変えることで予防したり完治させることは困難です。 しかしながら、いくつかの注意を払いながら生活することで不快な症状を軽減したり、シェーングレン症候群を原因とする二次的な疾患を予防することは可能です。

まずはドライマウスの注意点から。まばたきの回数が減少しやすいディスプレイの長時間の凝視は眼球表面の水分を喪失させてしまいます。 定期的に休憩を取り、まばたきすることを心掛けることが重要です。さらにディスプレイを目の位置より下側に配置することで目を大きく見開くことを防止できます。 周辺環境を変化させることも重要です。ただでさえ身体が乾燥しているのに室内が乾燥していてはより症状を悪化させます。加湿器を配置する、蒸しタオルを置いておく、 水を入れたコップを置いておくだけでも過剰な乾燥を防止できます。 メガネのフチに濡れたティッシュを掛けるという「裏技」も有効です。

加湿以外にも留意点はあります。過剰に照明が明るく目が疲れやすい、タバコの煙やホコリが舞っている、エアコンや送風機が近くにあるような状況も症状を悪化させます。 定期的に目薬を用いることも有効ですが、保存料が入っている目薬を頻繁に用いると眼の表面を傷つけることもあるので注意が必要です。 ドライアイ専用のヒアルロン酸含有の目薬がしばしば小さい容量しかないのはこの保存料を使用していない(使用できない)ためでもあります。

ドライアイの方が積極的に摂りたい栄養素としてはビタミンA(β-カロテンまたはカロチン)、アントシアニン、ω(オメガ)-3系脂肪酸です。 ビタミンAは主にほうれん草、春菊、こまつな、人参、鶏のレバー、豚肉、ヤツメウナギなどが豊富に含んでいます。 しかしながら、妊娠初期の妊婦はビタミンAを大量に摂取することは好ましくないので注意が必要です。 ちなみにビタミンAの前駆体であるβ-カロテンの形ならば妊婦でも安心して摂取可能です。 ω-3系脂肪酸は脂が豊富な魚、アントシアニンはブルーベリーやラズベリーなどに豊富に含まれています。 これらを上手く食事やおやつとして用いることでドライアイの症状緩和が期待できます。

その他にも身体を積極的に動かし、リラックスを意識的に行うことも健康には不可欠です。エレベーターやエスカレーターを控えて階段を使う、ウォーキングを行うなどは無理なく行える健康法です。 これら紹介させて頂きました注意点を守りながら漢方薬による治療を行うことがドライアイなど乾燥性の症状を取り除く近道になります。 なかなかすべてを遵守することは難しいですが、ひとつひとつ、出来ることから行っていくことが大切です。




ドライアイの改善例

患者は30代前半の男性・映画制作会社の技術職。現在、在籍している会社に就職してからドライアイに悩まされるようになった。 仕事柄、眼を酷使するので眼精疲労には慣れていたが、眼の乾燥感が顕著になると頻繁にまばたきをしないと眼を開けていることもできなくなった。 このままでは仕事にも支障をきたすということで当薬局にご来局。

お話を詳しく伺うと、最近になって職場の配置転換で強いストレスも感じているという。 眼は漢方医学における肝がその機能を司っていると考えられており、肝はストレスに弱いという特徴もある。 そこでこの方にはストレスを緩和する柴胡、眼を栄養する血を補う当帰、身体に潤いをもたらす麦門冬などから構成される漢方薬を服用して頂きました。 それにくわえて職場も乾燥しているということで、水分を含んだタオルをデスクのそばに置いておくなどの乾燥対策もお願いしました。

漢方薬の服用から約3ヵ月が経過した頃には、だいぶ眼の乾燥感は緩和してきたとのこと。 ご来局されてご症状の経過を伺っているときも慌ただしくまばたきをすることもなくなっていました。 お話を伺うと現在の部署にもだいぶ慣れてきたという。表情も徐々に明るくなってきた印象。 この方はストレスとドライアイの関連性に気付いていた節もあり、現在はストレス対策に重点を移しつつ漢方薬を継続服用して頂いています。




おわりに

近年、ドライアイでご来局される方がとても多くなった印象を受けます。 ドライアイの明確な原因は不明といっても、やはりパソコンや携帯電話の使い過ぎによる眼の酷使が当たり前となった 今日の世相を反映しているのかもしれません。 漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局には点眼薬を使用しても なかなか改善が見られなかった方がしばしばご来局されます。 元来、ドライアイと漢方薬は「相性」も良く、症状が劇的に改善される方が多くいらっしゃいます。 是非一度、ドライアイでお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

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