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【 卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞などを含む) 】と漢方薬による治療

卵巣嚢腫とは


卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)とは卵巣になんらかの液体が溜まって腫れている状態であり、その経過は比較的良好なものと定義されます。卵巣嚢腫の「嚢腫」とは良性腫瘍の影響で水分がたまり嚢胞状になったものを指します。


「嚢腫」と似た言葉に「嚢胞(のうほう)」が存在ます。嚢胞とは腫瘍が関与していない出血なども含めて、何らかの液体がたまって嚢胞状となったものとされます。したがって、それぞれ似てはいますが厳密には異なった病態といえます。


しかし、両者が「卵巣になんらかの液体が溜まって腫れている状態」であり、経験的に両者とも「経過は比較的良好」であることが知られています。このような経緯から、卵巣嚢腫には嚢胞性腫瘍である漿液(しょうえき)性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、成熟嚢胞性奇形腫、さらに非腫瘍であるチョコレート嚢胞や多嚢胞性卵巣も含まれることになります。


卵巣嚢腫なのに「嚢腫」ではない「嚢胞」も含まれてしまうことに違和感を覚えますが、上記のややアバウトな定義に従うならこのようなことになってしまいます。なお、卵巣で起こる悪性の腫瘍はしばしば卵巣癌と呼ばれ区別されます。


卵巣嚢腫の症状


卵巣嚢腫の主な自覚症状は下腹部痛、腹部の張り感、腹部の肥大化、腹水、腰痛、性器不正出血、便秘、頻尿などが挙げられます。しかし、人によってはこれらの自覚症状があまり出てこないケースもあり、婦人科系疾患の定期検診ではじめて卵巣嚢腫が発見されることもしばしばです。


卵巣嚢腫の西洋医学的治療法


基本的には手術が選択されます。卵巣嚢腫のサイズが小さいものならば腹腔鏡を用いた摘出手術が可能であり、ある程度の大きさ以上の場合は開腹による手術が適用されます。


卵巣嚢腫の漢方医学的解釈


漢方医学的に卵巣嚢腫は瘀血(おけつ)と呼ばれる血の滞りと津液の停滞である水湿が絡んだ病気と考えることができます。瘀血が生じるとその部分に刺すような痛みや不正出血などが起こりやすくなります。水湿が顕著な場合は重く鈍い痛みが現れやすいです。


卵巣嚢腫の元凶ともいえる血の滞り、瘀血が起こる原因はいくつか考えられます。まず血を動かして身体中を循環させているのは気の働きです。気が何らかの影響で不足したり気も滞ってしまった場合、気が持っている力が充分に発揮されず血も滞って瘀血が生まれてしまいます。気のトラブル以外にも冷えによっても血の流れは悪くなってしまうので、冷え性(冷え症)を改善することは非常に大切です。


さらに水湿や血の不足なども瘀血の形成には関与しますので、卵巣嚢腫には十人十色の複合的な原因があるといえるでしょう。したがって、個々人の体質や症状などから慎重に原因と治療法を決定する必要があります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた卵巣嚢腫の治療


卵巣嚢腫治療の中心になるのは血の流れを改善する生薬(活血薬)を含む漢方薬になります。活血薬には桃仁、当帰、川芎、牡丹皮、紅花、延胡索などが挙げられます。特に延胡索は優れた鎮痛効果を発揮し、当帰は血を補う力も強いので血が不足している方の卵巣嚢腫にとても有効です。


血を動かしているのは気でしたので、気に対応した漢方薬も卵巣嚢腫治療に用いられます。疲労感、身体の重だるさ、食欲不振、息切れなどの気の不足が顕著なら気を補う生薬(補気薬)である人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などが用いられます。精神的ストレスなどを受けて気の流れが悪くなっている場合、気の流れを改善する生薬(理気薬)である柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子なども必要になってきます。


水湿に対してはそれらを除去する生薬である蒼朮、沢瀉、猪苓、茯苓などの利湿薬が用いられます。さらに冷え性(冷え症)があると血の流れが悪くなるので身体を温める生薬(散寒薬)である桂皮、乾姜、細辛、呉茱萸、附子も検討されます。


このように卵巣嚢腫に用いられる漢方薬は活血薬や利湿薬を中心としつつ、その方の症状や体質によって様々に変化してゆきます。


生活面での注意点と改善案


当薬局にご来局される卵巣嚢腫を患っている女性のほぼすべてに共通しているのが冷え性(冷え症)です。冷えは血流を悪くしてしまうのでつらい生理痛を起こしやすくなります。まずはこれ以上身体を冷やさないようにすることが大切になります。


服装に関しては特に冬の服装、ファッション重視の薄着は問題になりがちです。以前、「ファッションは我慢」という言葉を聞いて妙に納得したことを記憶しています。しかし、金銭面の我慢ならともかく、健康に問題が出てきては我慢している場合ではありません。


しばしば、「生足」「へそ出し」「ノースリーブ」という「冷え性(冷え症)・三種の神器」を携えてご来局される方も多くいらっしゃいます。そうなるといくら漢方薬で対応しても、薬効を相殺されてしまい十分な効果が期待できなくなってしまいます。


まず、冷え性(冷え症)の方は「毛糸の靴下」「下着の上に毛糸のパンツ」「腹巻」という「保温・三種の神器」がお勧めです。その他にもカーディガンや毛布などを持ち歩くと外出時のクーラー対策にもなります。これは夏場の予期せぬクーラーにも有効です。


他にもぬるめのお風呂に長く浸かるといった方法も冷え性(冷え症)には有効です。熱過ぎるお風呂は長く浸かっていられないので結果的には身体の芯まで温まらなくなってしまいますので注意してください。さらにシャワーは身体の汚れを落とすものであり、温めるものではありませんので冬だけではなく夏もしっかりと湯船に浸かることをお勧めいたします。


卵巣嚢腫の改善例


患者は20代後半の女性・団体職員。中学生の頃から生理痛が強く悩んでいましたが、特に婦人科を受診することなく過ごしていました。社会人になっても市販の鎮痛薬を服用していましたが、下腹部痛だけではなく生理後に必ず性器不正出血も起こるようになりあわてて婦人科を受診。そこで卵巣嚢腫の一種であるチョコレート嚢胞と診断されました。


くわしい検査の結果、チョコレート嚢胞の大きさはまだ小さかったので手術は行わずまずは経過を見ることに。高校時代にニキビ治療の漢方薬を服用してうまくいったことを思い出し、漢方薬を使ってみようと考えて当薬局にご来局。


詳しくご症状を伺うと生理痛にくわえて生理不順、不正出血による貧血、それによると考えられる立ちくらみもあるとのこと。顔色が悪いでだけではなく、声に元気がなく全体的に弱々しい印象。


この方にはまず血を補う生薬と血をうまく流す生薬から構成される漢方薬を服用して頂きました。漢方薬を服用し始めてから5ヵ月が経った頃には生理痛も緩和され、不正出血も減少したので立ちくらみも無くなっていました。薄暗かった顔色もすこし紅みのある鮮やかな肌色へ。


この頃からチョコレート嚢胞を局所的な水湿と捉えて余分な水分の代謝を促す生薬をより含んだ漢方薬に変更しました。この判断はこの方が下肢に強いむくみがあり、慢性的に両脚に重だるさを感じていたことも後押ししました。新しい漢方薬に変更して8ヵ月が経過した頃には生理周期もほぼ28日周期に固定され、むくみと一緒に生理痛も無くなっていました。


その後の定期検診でもチョコレート嚢胞は縮小して自然に消滅が期待できるレベルにまで落ち着いていたとのこと。この方はその後も予防的に漢方薬を体調に合わせて微調節しながら継続服用して頂いています。


おわりに


卵巣嚢腫はつらい生理痛や不正出血など日常生活に支障をきたしやすい症状が多いという特徴があります。それ以外にも卵巣機能を低下させるチョコレート嚢胞などは不妊症の主要な原因にもなりますので放置は将来を考える上で危険です。


当薬局では卵巣嚢腫の症状が漢方薬の服用によって好転する方がとても多くいらっしゃることから、卵巣嚢腫と漢方薬とは相性が良いと実感しています。卵巣嚢腫を患われている方は是非一度、当薬局にご来局くださいませ。

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