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【 ADHD(注意欠如・多動症または注意欠陥・多動性障害) 】と漢方薬による治療

一二三堂薬局とADHD(注意欠如・多動症)


当薬局では長年、ADHDに有効な漢方薬の研究を重ねてまいりました。その理由はふたつあります。ひとつはADHDはお子様にとても多い病気であり、多くのご両親が西洋薬の副作用を心配して充分な治療ができないことに悩まれているからです。そしてもうひとつは漢方薬はADHDの改善にとても有効ということを経験的にも実績面でも知っているからです。


このページではADHDに対する漢方治療について解説させて頂きます。当薬局の情報につきましてはページ上段のアイコン、または下記のリンクをご覧ください。


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ADHD(注意欠如・多動症)とは


ADHDとは「Attention Deficit / Hyperactivity Disorder」の略です。ADHDを邦訳すると「注意欠如・多動性障害」や「注意欠陥・多動性障害」とされますが、多くの場合は英名の頭文字をとったADHDと呼称されます。


邦訳については前者の「注意欠如・多動症」を用いる流れとなっていますが、「注意欠陥・多動性障害」も依然として用いられていることから、本ホームページのタイトルでは併記を行いました。


ADHDは注意欠如(不注意)、多動性、衝動性を伴う発達障害の一種です。これらの三要素はADHD患者のすべてに現れるわけではありません。多くの場合において不注意が多いタイプ、多動性と衝動性が多いタイプ、そして三要素のすべてが現れるタイプに大別されます。


ADHDの発生率に関しては不明な点も多いのですが、小学生の3~5%程度と推測されています。この数字で考えると30人から構成される1クラスにおいてほぼ1人以上はADHDを患っている計算になります。


しばしば見受けられる胃潰瘍の生涯において患う確率は約10%といわれています。この数字からもわかるようにADHDは決して稀な病気ではないといえます。さらにADHDは男性の方が女性よりも患っている割合が高いという報告もあります。


ADHD(注意欠如・多動症)の原因


ADHDには脳における前頭前野(ぜんとうぜんや)と呼ばれる部分のはたらきに問題があるとされています。前頭前野は注意力、判断力、感情などをコントロールしている部分です。したがって、前頭前野に問題が生じると注意力が散漫になったり、感情の抑えが効きにくくなってしまいます。


前頭前野の問題の他にもADHDを患っている方はドパミンやノルアドレナリン(別名:ノルエピネフリン)といった神経伝達物質が不足しているといわれています。これら神経伝達物質の不足によって脳は正常なはたらきができなくなってしまいます。その結果としてADHDに特有の症状が出ると推測されています。


ADHD(注意欠如・多動症)の症状


ADHDの症状は注意欠如(不注意)、多動性、衝動性を伴ったものでした。下記ではこれらADHDに特徴的な症状をより詳細に解説してゆきます。


注意欠如(不注意)による症状

ADHDにおいてはしばしばこの注意欠如が顕著に現れます。集中が持続できない、気が散りやすい、忘れっぽいなどの症状は注意欠如といえるでしょう。この注意欠如の諸症状は比較的、女性に多いとされています。


より具体的な症状としては……
●単純な計算問題が苦手
●ケアレスミスが多い
●漢字の書き取りなどの反復練習が苦手
●宿題や親に渡すプリントなどの存在を忘れやすい
●文房具などの身の周りのものを紛失しやすい
●部屋や机の片付けが苦手
●興味があるものには集中できるがそれ以外のことが過度に散漫になる
●話しかけられているのに気付かない
●計画を立てたり優先順位を設定するのが苦手
●行動が遅れやすい
●外からの刺激(音や目に入るもの)で集中が切れやすい
●イライラしやすい
……などが挙げられます。


多動性による症状

多動の症状は身体の動きを抑えられないもの、そして発話に関連するものが挙げられます。身体の多動は文字通り、じっとしているのが困難であり動いていないと落ち着かない状態です。さらに「言葉の多動」は過度にしゃべり続けてしまう状態といえます。多動性は一般的に成長とともに鎮まってゆく傾向がありますが、思春期以降もじっとしているのが苦痛という感覚が残ることもしばしばです。


より具体的な症状としては……
●授業中に立ち歩いてしまう
●授業中にずっと落書きをしている
●気になることがあるとそちらへすぐに行ってしまう
●着席していてもそわそわと手足を動かす
●運動する際の力の入れ方が過激になりやすい
●一方的にしゃべりだして止まらない
●声が大きい
●話の内容がコロコロと変わる
●発言がそれまでの前後関係に沿っていない
……などが挙げられます。


衝動性による症状

衝動性とは自分の抱いている感情、発言、行動を抑制することが難しい状態を指します。思いついた行動に対して実行に移す前に立ち止まって考えることが難しいことによって起こる諸症状といえます。


より具体的な症状としては……
●順番やゲームのルールを守るのが苦手
●他の子が遊んでいるおもちゃを取り上げてしまう
●思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こしやすい
●思っていることを言わずにはいられない
●他者の話を最後まで聞かずに話してしまうこと
……などが挙げられます。


ADHDの症状全般にいえること

ADHDの諸症状はしばしばグループでの行動を困難なものにしてしまいます。わざと邪魔をしているのではと誤解を生んでしまうこともあるでしょう。


しかしながら、ADHDに起因する諸症状は意図的に他者を困らそうとしたり邪魔しようとしているものではないことを周囲の人に理解してもらうことが大切です。とても根気が必要であり、つらい作業でもありますがとても重要なことでもあります。


ADHD(注意欠如・多動症)の西洋医学的治療法


現在、ADHDの治療には神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の不足を解消する薬が使用されています。具体的にはコンサータ(一般名:メチルフェニデート)とストラテラ(主な商品名:アトモキセチン)が挙げられます。


個人差はありますが、治療薬としての効果はコンサータがストラテラよりも高いといわれています。その一方でコンサータは依存性も高く、ストラテラよりも慎重に使用されます。両者とも副作用に食欲不振や吐気といった消化器系のトラブルがあり、しばしば治療薬の継続を難しくしてしまいます。


今日において西洋医学的なADHDの治療薬は非常に限られてしまいます。上記以外の薬として抗うつ薬などが用いられることもありますが、有効性については判断が分かれています。


ADHD(注意欠如・多動症)の漢方医学的解釈


ADHDによって引き起こされる諸症状はうまく情動をコントロールできないことによって起こっている状態といえます。漢方医学において情動は肝(かん)がコントロールしていると考えます。漢方医学の理論における肝は気の流れをスムーズにし、精神状態を安定化させるはたらきを担っています(肝はその他にも眼や筋肉のはたらきも司っています)。


この肝のはたらきが何らかの原因で失調した場合は気持ちの乱れやそれに伴う行動の乱れが起こってしまいます。つまり、肝が不調になるとイライラ感、理由のない怒り、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発し、それに伴って行動も不安定で過剰になりやすくなります。


それ以外にも肝が慢性的なストレスを受けて病的な熱を帯びた状態になってしまうとイライラ感が一層強くなり、頭痛、めまい、のぼせ、けいれん、ふるえ、意識障害などを引き起こす場合もあります。(これらのいかにも「熱っぽい症状」はADHDには必ずしも当てはまるものではありませんが、しばしば小児は大人よりも「熱」を帯びやすいといわれています)したがって、漢方医学的には肝に注目してADHDの治療を行うことになります。


さらに肝以外にも、肝と関連深い腎(じん)への配慮も必要な場合があります。腎は成長や生殖などを司る精(せい)を蓄えています。腎は肝とつながりが深い臓であり、肝腎同源(かんじんどうげん)といって肝が失調すると腎のはたらきも弱まり、逆に腎の精が少なかったりすると肝のはたらきも弱まってしまいます。


精は成長に欠かせないものであり、ADHD以外の発達障害や成長障害(低身長・低体重)などの精の不足と考えられる症状がADHDと一緒にあるようならば、漢方薬を用いてそれらに対する治療も行われます。


ADHDの症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでした。この肝は精神的なストレスによってその力が低下しやすいデリケートな臓です。したがって、まずはお子様の精神的なストレスがないかを考える必要があります。経験的には友達や先生との関係、学校のクラス替えなどに伴う環境の変化、家庭環境の変化などが多いと感じます。


特に衝動性が強く現れるとうまく友達と遊ぶことができず、場合によってはケンカが起こりやすくなってしまいます。結果的にストレスが増幅され、憂うつ感や食欲の低下といった症状も出やすくなってしまいます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたADHD(注意欠如・多動症)の治療


上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いたADHDの治療は肝をいたわり、その機能を回復させることが中心となります。肝の力が衰えるということは肝にためられていた血(けつ)が消耗するということであり、それを補うような治療が中心に据えられます。


消耗してしまった血を補うには地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などの補血薬(ほけつやく)を含んだ漢方薬が有効です。さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える理気薬(りきやく)と呼ばれる柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などの生薬もしばしば併用されます。


イライラ感が強く怒りっぽい状態が顕著ならば黄芩や黄連といった熱を鎮める清熱薬も用いられます。その他にも竜骨と牡蠣も気持ちを鎮める効果に優れています。全体的に発達と成長がゆっくりしている子に対しては腎の精を補う補腎薬(ほじんやく)である鹿茸なども漢方薬を構築する上で重要視されます。


これら以外にもADHDの症状や体質は個々人によって微妙に異なりますので、臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。やや横道にそれますが、コンサータやストラテラといった西洋薬を服用することで症状が改善する反面、副作用が出てしまう場合はその副作用を鎮めるような漢方薬を使用するという発想もあり得ます。


上記のように調合する漢方薬の内容はADHDを患っている方の状況によってさまざまに変化してゆきます。したがって、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


ADHD(注意欠如・多動症)の改善例


患者は小学4年生の男児。保育園時代はあまり問題になりませんでしたが、小学1年生の頃から授業中の立ち歩きが目立ちはじめて先生を困らせてしまったという。体育の時間も整列や球技のルールを守るのが得意ではない。性格的には思い通りにいかないと癇癪(かんしゃく)を起こすこともしばしばだが、基本的には温厚でのんびり屋。


小学2年生の時に小児科から軽度のADHDを指摘され、その後は薬物療法を開始するも食欲不振と腹痛が起こり、体重も減ってしまいました。薬の服用量などを調節してもうまく継続はできませんでした。当薬局へは同級生がチック症の治療をしていた縁でご来局されました。


ご両親と一緒にご来局された際は薬局の中を興味深く「探検」されていました。漢方薬局は確かに珍しいものが多いのですが、ご様子からは典型的なADHD、特に多動性の症状が見て取れました。最近はやや怒りっぽくなり、大声で怒ったりするので小学2年生の妹様も少しビクビクしてしまっているとのこと。


ADHDの症状以外としては週に一度ほどの頻度で夜泣きが見られる。友人関係は良好。体格的には年齢よりもやや小柄でお母様は小児科の薬が影響していたのではないかと少し心配されていました。


色々と悩みましたがまず柴胡、竜骨、牡蠣などから構成される気持ちを安定化させる漢方薬を服用して頂きました。漢方薬が服用できるか少し不安でしたが無事に飲めたということで同じ漢方薬を4ヶ月間服用して頂きました。


ご症状に関しては以前にみられたような、手が付けられないくらい怒り狂うようなことはなくなり妹様も過ごしやすそうとのこと。夜中に突然泣いて起きる頻度が減ってきたので、朝起きられないことも無くなりました。


しかし、まだ食欲があまり無く食べる量も2歳下の妹様と同じくらいで、この頃の健康診断で低身長と低体重を指摘されたとのこと。漢方医学における肝が不調に陥ると脾胃(消化器)の調子が落ち込むことがしばしばあります。現在の漢方薬でも徐々に食欲は上向くと考えていましたが、お母様の心配も強かったので人参、黄耆、白朮などを含んだ脾胃のはたらきを向上させて気を補う漢方薬を一時的に併用して頂きました。


新しい漢方薬の組合せにしてから4ヵ月が経った頃には食欲も出てきて、たまに訴えられていた吐気や腹痛も無くなりました。全体的な体調が整ってくるのと併せて多動性も徐々に鎮まり、感情面は引き続き安定しているとのこと。脾胃が整いうまく気が補え、さらに気の巡り自体も良くなった影響だと考えられました。


その後も症状と体質に併せて漢方を調合し、2年以上が経過しています。体格も見違えるように良くなり、心身ともに落ち着いている印象です。まだ身体を動かしたい衝動に駆られることもあるということですが、うまくご自身でコントロールできているとのこと。


小学校を卒業後は自由な校風の私立中学校に進学し、バレーボール部に所属するなど学生生活を楽しまれています。漢方薬はその後も精神状態や消化器系の調子を見ながら微調節を繰り返しつつ、継続服用して頂いています。


改善例2

患者は中学校3年生の女子。小学校時代から異常に忘れ物が多く「電車に乗って荷物を載せる柵に忘れ物をした経験は数えきれないくらい」とご自身でおっしゃられていました。数年前にADHDと診断されましたが特に服薬などの治療はせずに過ごしてきました。


最近の困る症状としては集中力が続かず、勉強をしていてもすぐに他のことに意識が向いてしまうことを挙げられました。ご来局時、一緒にいらっしゃったお母様も高校受験への影響を心配されていました。


詳しくご様子を伺うと、上記のご症状にくわえて疲労時に起こりやすい頭痛、めまい、立ちくらみが気になるとのこと。特に春先になるとこれらの症状が悪化し、イライラ感や気分の落ち込みが現れるという。これらのご症状から、娘様には気の巡りを改善する柴胡、肝の不調を改善する芍薬、頭痛やふらつきを改善する釣藤鈎などから構成される漢方薬を調合しました。


漢方薬を服用して4ヵ月ほどが経過すると、頻繁に起こっていた頭痛はやわらぎロキソニン(鎮痛薬)を服用することはほぼなくなりました。めまいで視界が左右に揺れるようなことも減ったとのこと。一方でお母様曰く忘れ物や集中力に関して変化はない。


体調は改善しているので同じ漢方薬をさらに1ヵ月続けましたが忘れ物などに改善は見られなかったので新しい漢方薬へ変更。竜眼肉や酸棗仁を含んだ漢方薬を調合しました。この漢方薬は古来より健忘(記憶力の低下)にもちいられることを参考にしました。


漢方薬を変更して3ヵ月が経つとご本人が「少しずつ、自分は忘れ物をしやすいんだと自覚して行動できるようになった」とのこと。忘れ物をしないようにメモを残すなどご自身で意識を高められているという。秋になり受験が近づいているという緊張感も手伝ってか、勉強もしっかりとこなせているご様子。


年が明け、受験の季節となり、娘様は無事に第一希望の都立高校に合格されました。一方で新生活の緊張もあってか頭痛が目立つということで、最初に調合した漢方薬へ変更。その後は頭痛や春特有の情緒不安定も現れず、元気に登校されているとのこと。漢方薬はご症状や季節に合わせて調節しつつ、継続して頂いています。


おわりに


「ADHD」という病名が一般的なものとなってからずいぶん経った印象を受けます。その一方でなかなかその「中身」の理解は進んでいないのではないでしょうか。病院で処方される治療薬もまだ限られており、副作用の頻度も低くないといわれています。


漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では限られる数種類の西洋薬を使用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから情緒が安定し、注意欠如(不注意)や多動性による症状が少しずつ緩和されることからADHDと漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、ADHDにお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

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