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【 痙攣性発声障害 】と漢方薬による治療

一二三堂薬局と痙攣性発声障害

当薬局では長年、痙攣性発声障害に代表されるジストニアに有効な漢方薬の研究を重ねてまいりました。 その主な理由としてはジストニア全般に対して有効な西洋医学的治療法が確立されていないことが挙げられます。

その一方で心身の緊張を緩和する漢方薬は痙攣性発声障害に対して有効であることを経験的にも実績面からも知っているからです。

このページでは痙攣性発声障害に対する漢方治療について解説させて頂きます。
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痙攣性発声障害とは

痙攣性発声障害とは自分の意思とは無関係に声帯を動かしている筋肉が緊張してしまい発声に異常が起こってしまう病気です。 このような自分の意思に反して筋肉が緊張したり動いてしまう病気をジストニアと呼びます。 したがって、痙攣性発声障害はジストニアの一種といえます。 しばしば、声帯筋という一部分の筋肉に起こることから局所性ジストニアともいわれます。

言葉を出すことが困難となってしまう病気には失語症や失声症も存在します。 失語症は脳梗塞や脳出血などによって脳の言語をつかさどる部分が損傷することによって起こります。 さらに失声症は精神的なストレスやショックをきっかけに発声が困難となる病気であり、声帯などの発声器官に異常は見られません。

痙攣性発声障害においては脳の損傷は無く、発声器官の声帯筋に異常がみられることから上記のような失語症や失声症とは異なった病気といえます。




痙攣性発声障害の原因

痙攣性発声障害をはじめとするジストニア全般において、明確にその原因はわかっていません。 しかし、筋肉などの運動を支配している大脳基底核と呼ばれる部分に問題が生じているという説が有力です。

痙攣性発声障害は明確な原因が不明な一方で声をよく出す仕事に就いている方や仕事などで過度なストレスを受けている方に多く発症することも知られています。 上記を総合すると痙攣性発声障害はある程度、責任がある(プレッシャーがある)仕事を任されている方が苦手なスピーチや訓示を人前で行うケースなどに起こりやすいと想像できます。




痙攣性発声障害の症状

痙攣性発声障害は大きく内転型と外転型の二種類に分けられます。発声困難の内容も内転型と外転型で異なります。 その一方で痙攣性発声障害において両者を明確に分けられるものではなく、しばしば内転型と外転型が混じり合った病態もみられます。


内転型の痙攣性発声障害

発声の際に声帯が内側に閉じようとしてしまう病態です。 内転型の声質はなんとか頑張って声を出しているような、緊張しているような状態となります。 痙攣性発声障害においてはこの内転型を患っている方が比較的多いとされています。


外転型の痙攣性発声障害

発声の際に声帯が開いてしまう病態です。 外転型の声質はかすれてしまったり、発声自体が中断されたりします。息が漏れている音が聴き取れるのが外転型の特徴といえます。 外転型は内転型よりも手術やボトックスによる治療が効きにくいという報告があります。




痙攣性発声障害の西洋医学的治療法

痙攣性発声障害に対する西洋医学的治療法はまだ確立されていません。 しばしば用いられる治療法としてはボツリヌス毒素を加工して薬剤化したボトックスの注射剤が挙げられます。 それ以外にも声帯を囲んでいる軟骨を左右に広げる外科的手術も行われています。




痙攣性発声障害の漢方医学的解釈

痙攣性発声障害の症状は声帯を支配している筋肉の動きがうまく制御できないことが根本にあります。 漢方医学において筋肉の動きは肝(かん)がコントロールしていると考えます。 漢方医学における肝は筋肉の動きだけではなく、眼の働きを維持したり、気持や感情を落ち着ける働きを担っています。 この肝の働きが何らかの原因で失調した場合は筋肉の動き、眼の働き、そして精神の安定化に問題が生じてしまいます。 筋肉の働きの失調は痙攣性発声障害に代表されるジストニアに繋がります。気持ちの乱れはイライラ感、理由のない怒り、情緒不安定、ヒステリーなどを誘発します。

したがって、漢方医学的には肝に注目して痙攣性発声障害の治療を行うことになります。 痙攣性発声障害の症状に肝の失調が関与していることは上記で説明したとおりでしたが、根本的になぜ肝が失調してしまったのかを考える必要があります。 肝は多くの場合、精神的なストレスによって働きが低下してしまいます。したがって、精神的ストレスが多い場合はそれに対するケアも必要になります。

(より詳しい漢方用語はこちらをご参照ください)


漢方薬を用いた痙攣性発声障害の治療

上記で述べてきた理論のとおり、漢方薬を用いた痙攣性発声障害の治療は肝をいたわることが中心となります。 肝の力が衰えるということは肝にためられていた血(けつ)が消耗するということであり、それを補うような治療が中心に据えられます。 (これを「肝血を補う」「柔肝(じゅうかん)する」と言います) 血を補う生薬(補血薬)としては熟地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。 特に芍薬は筋肉をリラックスさせる働きも持っているので痙攣性発声障害の漢方薬にはしばしば含まれます。 血を補う力はありませんが葛根は肩から首の筋肉をリラックスさせる働きに優れているので痙攣性発声障害とそれに伴う首肩のつらい凝りの治療に適しています。

さらに精神的ストレスを緩和することで肝血の消耗を抑える生薬(理気薬)、具体的には柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子なども用いられます。 他にも筋肉の緊張や震えを鎮める釣藤鈎、気持ちを鎮める竜骨、牡蠣などの生薬も併用されることが多いです。

これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。 したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


痙攣性発声障害の改善例

患者は40代前半の男性・会社経営者。 会社を経営しているために普段から大勢の前で話す機会が多かったということですが、数年前から声が出し難くなってしまいました。 その頃くらいから会社の一部門の業績が悪化し、人員整理などのストレスの溜まる仕事も多く重なり忙殺されるように。 声が出にくくなったのも最初の頃は社員との面談や商談などで喉が疲れてしまったのかなと考えていたとのこと。

しかし、症状は徐々に悪化して話の途中からだんだんと声が出なくなってしまいました。 話の最後の方は言葉のすべてに濁音が付いたような声質に。喉に痛みも無かったので、不審に思い病院を受診するも病名は分かりませんでした。 その後、大学時代の友人の医師から「痙攣性発声障害」という病気の存在を指摘され、遠方の関西にある専門病院を受診。 そこで初めて痙攣性発声障害と診断されました。

その病院では発声訓練などを受けるも症状は緩和せず、最終的に手術を受けましたが完治には至りませんでした。 最悪の時期と比べると症状は3/5程度になったとのことですが、仕事柄、人と話すことも多いので悩んでいたところ奥様から漢方薬を薦められて当薬局へご来局。

詳しくお話を伺うと、ピークは過ぎたが仕事にまつわるストレスは依然として強いとのこと。 お話を伺っている途中も何とか声を絞り出している、痙攣性発声障害特有の症状が聞き取れました。 この方にはまず心身の緊張を緩和させるために柴胡、芍薬、厚朴、釣藤鈎などから構成される漢方薬を服用して頂きました。

漢方薬服用から5ヵ月が経過する頃、声にハスキーさは残っていましたがだいぶ聴き取りやすい声質に変わっていました。 ご本人は声の変化に加えてイライラ感や肩凝りが緩和されたことに喜ばれていました。 しかし、これから難しい仕事で忙しくなりそうだということで牡蠣、竜骨、柴胡を含む漢方薬に変更しました。

新しい漢方薬に変更してから6ヵ月が経った頃には途中から声が沈んでしまうことは無くなり、痙攣性発声障害のことを知らなければわからないくらいの声になっていました。 スピーチをする時もまだ苦手意識はあるものの、特に誰からも訝(いぶか)しがられることも無くなったとのこと。 この方は痙攣性発声障害の予防と服用中は寝つきも良かったということで同じ漢方薬を継続して服用して頂いています。




おわりに

痙攣性発声障害は決して「知名度」が高い病気ではなく、医療従事者の間でもあまり知られていない病気といえるでしょう。 したがって、なかなか周囲の人に病気のことを理解してもらえずに悩んでいる方が多い印象です。

漢方薬はボトックスのような西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。 当薬局では西洋薬を使用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。 そして漢方薬を服用し始めてから、痙攣性発声障害による症状が少しずつとれてくることから、痙攣性発声障害と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。 是非一度、痙攣性発声障害にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

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