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【 アトピー性皮膚炎 】と漢方薬による治療

アトピー性皮膚炎とは


アトピー性皮膚炎とは痒(かゆ)みをともなう湿疹が慢性的に回復と悪化を繰り返す炎症性皮膚病です。一言でアトピー性皮膚炎といってもカサカサした乾燥傾向が強い方からジュクジュクした滲出液に悩まされる方までさまざまです。非常に痒みがつらい場合もあれば、外観的異常のみでそれほど掻痒感を訴えられない方もいらっしゃいます。


アトピー性皮膚炎は決して珍しい病気ではなく、小児を中心にしばしばみられます。諸説ありますが、小学生のおよそ5%程度がアトピー性皮膚炎を患っているというデータもあります。多くの場合は小学校を卒業するころになると自然に治癒しますが、それ以降も症状が慢性的な経過を辿ることもしばしばです。


そもそも「アトピー(atopy)」とはギリシア語で「奇妙なこと」を意味する「atopia」に由来します。このことからも昔は「奇妙で得体のしれない皮膚病」と捉えられていたことが分かります。


しかし、今日では皮膚のバリア機能の低下と免疫の過剰反応によって起こる病気であり、そこに遺伝的要因などが関連していることが分かっています。現代西洋医学的にもある程度の治療法が確立されてはいますが、それでも上手くいかない例も多く、現在でもアトピーな部分(奇妙な部分)を残している皮膚病といえるでしょう。


アトピー性皮膚炎の原因


上記でも簡単にふれたとおり、アトピー性皮膚炎は皮膚の乾燥によるバリア機能の低下と免疫系の過剰な反応によって引き起こされていることが分かっています。より具体的に、皮膚に関しては保湿成分であるセラミドとフィラグリンの低下、免疫に関してはIgEという抗体の過剰反応がアトピー性皮膚炎の主な原因といえます。


セラミドとフィラグリンは皮膚の表面部分において水分を保持する役割を担っています。体質的にセラミドやフィラグリンが不足しがちな方は皮膚の潤いが失われやすく、さらに皮膚表面のバリア機能も失われてしまいます。結果的に免疫が過剰反応してしまう物質(アレルゲンと呼ばれます)が体内に侵入しやすくなってしまいます。


アトピー性皮膚炎における代表的なアレルゲンにはダニ、カビ、犬や猫のフケや毛、ホコリなどのハウスダスト、さらに一部の食品成分(卵、牛乳、そば、大豆、小麦、米、ピーナッツ、生魚など)が挙げられます。


バリア機能が失われると当然、上記のようなアレルゲンだけではなく細菌やウイルスも侵入しやすくなり、感染によっても炎症が起こりやすくなります。保湿機能も失われると皮膚は乾燥して、ちょっとした刺激にも反応してしまう過敏な状態になってしまい痒みが生じます。ここで皮膚を掻いてしまうとさらに皮膚表面の角質層を傷つけるという悪循環に陥ってしまいます。


アトピー性皮膚炎ではアレルゲンに対して大量のIgE抗体が作られてしまい炎症反応や痒みが連鎖的に起こります。このような特定のアレルゲンに対してIgE抗体が「暴走」してしまうタイプのアレルギーにはアトピー性皮膚炎の他に気管支喘息、花粉症を含めたアレルギー性鼻炎、食物や薬剤に対するアレルギー、蕁麻疹(じんましん)なども含まれます。


アトピー性皮膚炎の主な原因は上記のようなものですが、症状を悪化させる要因もある程度、明らかにされています。代表的なものに精神的ストレス、過労、睡眠不足、夏場の汗や冬場の乾燥、ウールやポリエステル製の繊維による刺激、衣服を不潔にしたまま放置する、アルコールやつらい食べ物などの刺激物の摂取、女性の場合は生理不順などが挙げられます。


アトピー性皮膚炎の症状


アトピー性皮膚炎の症状は何といってもつらい皮膚の痒みです。患部は炎症により赤くなり、腕や膝の裏側(四肢屈曲部)や首といった頻繁に動かされる部分、顔などに起こりやすいです。アトピー性皮膚炎の炎症は患部が左右対称に現れやすいという特徴もあります。


年齢によって炎症が起こりやすい部分に差も見られます。乳児期は炎症が頭部に起こりやすく、徐々に手足や体幹に拡大してゆきます。幼児・小児期になると四肢屈曲部や首、頭部に集中しやすくなります。思春期以降は四肢屈曲部にくわえて上半身全体に炎症が現れやすいです。肌の状態にも違いが出やすく、乳児期はジュクジュクとした湿潤傾向が強く、年齢とともに徐々に乾燥傾向が強まりやすいです。


アトピー性皮膚炎の症状はそのつらい痒みだけではありません。外観的に患部が目立つ場合も多く、他人の視線が過度に気になってしまう結果、引きこもりがちになってしまったり自分に自信が持てなくなってしまうなどの精神的な問題も生じてしまいます。


アトピー性皮膚炎の西洋医学的治療法


西洋医学的な治療法は保湿薬によるスキンケア、副腎皮質ステロイド薬を中心とした抗炎症薬、そして抗アレルギー薬が核となります。標準的な保湿薬と抗アレルギー薬を使用し、炎症の強さによって抗炎症薬のレベルを調節してゆくのが定石になります。


保湿薬には保湿効果にくわえて血流増加作用やケロイド化を防ぐ力もあるヒルドイド(ヘパリン類似物質)、プロペト(白色ワセリン)、尿素クリーム、亜鉛華軟膏などが代表的です。


抗炎症薬は副腎皮質ステロイド薬の外用が中心となります。副腎皮質ステロイド薬はその抗炎症作用の強さから下記のように5つにクラス分け(より下に行くほど強力)されており、肌の状態から適切なレベルの薬を選択する必要があります。


「weak」
プレドニゾロン(一般名も同じ)

「medium」
レダコート(一般名:トリアムシノロンアセトニド)
アルメタ(一般名:アルクロメタゾンプロピオン酸エステル)
キンダベート(一般名:クロベタゾン酪酸エステル)など

「strong」
メサデル(一般名:デキサメタゾンプロピオン酸エステル)
ザルックスやボアラ(ともに一般名:デキサメタゾン吉草酸エステル)
リンデロンV(ベタメタゾン吉草酸エステル)など

「very strong」
アンテベート(一般名:ベタメタゾン酪酸プロピオン酸エステル)
パンデル(一般名:酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン)
マイザー(一般名:ジフルプレドナート)など

「strongest」
デルモベート(一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル)
ダイアコートやジフラール(一般名:ジフロラゾン酢酸エステル)など


その理由として抗炎症作用の強さと副作用の強さは比例するからであり、むやみに高いレベルの副腎皮質ステロイド薬を使用するのは賢明ではありません。副腎皮質ステロイド薬(外用薬)の主な副作用としては感染症のかかりやすさ、色素の脱失、毛細血管の拡張、皮膚の萎縮、多毛化、そして酒皶様(しゅさよう)皮膚炎です。


酒皶様皮膚炎とは外用の副腎皮質ステロイド薬を顔面に長期間使用したケースで見られる特徴的な副作用です。具体的には使用した部分の全体的な紅色化、盛り上がった湿疹やニキビの出現、皮膚の脱落、つっぱり感、ほてり感などです。


抗炎症薬には副腎皮質ステロイド薬以外に免疫抑制薬の外用薬も含まれます。代表的なものがプロトピック(一般名:タクロリムス)軟膏であり、顔や首の炎症にしばしば用いられます。


抗アレルギー薬は主にアトピー性皮膚炎による痒みを抑える目的で使用されます。頻用されるものにアゼプチン(一般名:アゼラスチン)、アレジオン(一般名:エピナスチン)、アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)、クラリチン(一般名:ロラタジン)、エバステル(一般名:エバスチン)、アゼプチン(一般名:アゼラスチン)、などが挙げられます。


抗アレルギー薬の作用はIgE抗体が過剰反応することで放出され、炎症を助長するヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターのはたらきを抑制することで症状を緩和させます。


アトピー性皮膚炎の漢方医学的解釈


漢方医学の視点からアトピー性皮膚炎を考えると、主な原因に身体を栄養して健康な状態に保つはたらきを担っている血(けつ)の不足が挙げられます。血が不足すると栄養不良による肌乾燥の他に、疲労感、動悸や息切れ、ドライアイ、不安感、不眠なども起こりやすくなります。


血(けつ)は陰(いん)の性格を持ち、陽(よう)を抑制しています。簡単にいえば血が冷却水のようにはたらき、適度に身体内の熱をコントロールしているのです。しかしながら、血の不足した状態である血虚(けっきょ)に陥ってしまうとこの熱をコントロールできなくなってしまいます。この状態を陰虚火旺(いんきょかおう)と呼びます。


さらに陽(熱)が優勢になってしまうと風(ふう)が発生します。これを血虚生風(けっきょせいふう)と呼びます。イメージとしては熱気球を飛ばすためにバーナーで火を焚くと強い風(かぜ)が起こるような感じです。


風(ふう)はしばしば身体に痒み、特に風(かぜ)のようにあちらこちらに素早く患部が移動してしまうような痒みを起こします。アトピー性皮膚炎の典型的な症状である皮膚の乾燥は血虚、炎症などの熱性症状は陰虚火旺、痒みは血虚生風によって起こることが多いです。


しかし、そもそも全ての発火点である血虚はなぜ起こってしまったのかを考える必要もあります。血虚を引き起こす要素はさまざまですが、主には精神的ストレス、過労、睡眠不足、暴飲暴食による消化器の衰弱、食欲不振や虚弱体質などが挙げられます。


これらのなかで食欲不振や虚弱体質は気虚(ききょ)と呼ばれる症状にあたります。気虚のイメージとしては元気が不足している状態というのが一番わかりやすいでしょう。気は血の原材料でもあり、気が不足すると必然的に血も不足し血虚の状態に進んでしまうのです。さらに精神的ストレス(これを肝気鬱結(かんきうっけつ)と呼びます)は身体に強い負荷を強いることで血を消耗することが知られているので注意が必要です。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いたアトピー性皮膚炎の治療


アトピー性皮膚炎の発火点は血虚によるものでしたから、血を補う漢方薬である補血薬(ほけつやく)を含んだ漢方薬が治療において中心的な役割を担います。血を補う作用のある生薬の補血薬(ほけつやく)には地黄、当帰、芍薬、阿膠、何首烏などが挙げられます。


その他に陰虚火旺を鎮めるために補血薬にくわえて黄連、黄芩、黄柏、山梔子、知母、石膏などの清熱薬(せいねつやく)も併用されます。清熱薬の多くは炎症を抑えるはたらきも持っているのでアトピー性皮膚炎治療には不可欠です。痒みを抑えるためには風を鎮める生薬である防風、荊芥、連翹、薄荷、蒺藜子、蝉退なども重要です。


上記の他にも肝気鬱結(精神的ストレス)が顕著ならば柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などの気の流れを改善する理気薬(りきやく)が加えられます。食欲不振や体力不足などの気虚症状があるようならば人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などの補気薬(ほきやく)も必要です。血の不足が深刻な場合は血と気を同時に補うと効果的に治療ができます。


これら以外にもアトピー性皮膚炎は複合的な疾患なので臨機応変に漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


生活面での注意点と改善案


アトピー性皮膚炎を改善するためには生活面の対応が非常に重要です。そのなかでもスキンケアと食生活はその中心を担っています。


スキンケア

入浴によって皮膚の汚れ(アレルゲンだけではなく皮膚から出る老廃物や汗の残り)をしっかり洗い流す必要があります。しかし、この「しっかり」がポイントです。アトピー性皮膚炎の肌は角質層が破壊されているのでより刺激に敏感になっています。ゴシゴシと強く洗ってしまうと角質層をさらに傷つけてしまうので絶対に避けるべきです。


肌を洗う際は石鹸の泡でなでるように洗いましょう。入浴後は充分に保湿薬のクリームやローションを塗ることが大切です。可能ならばお風呂から出てから5分以内が良いとされています。これは温かい水分は素早く皮膚から逃げてしまうからです。


副腎皮質ステロイドの軟膏やクリームを使用する場合、その量は感覚的には少しべたつくくらいが適量といわれています。より具体的には、外用薬を人差し指の第一関節まで出し、それを手のひら2枚分の面積を目安に塗りましょう。


紫外線対策

保湿の他にも夏場は紫外線によるダメージも見逃せません。ここで問題になってくるのがどのようにして紫外線を防ぐかです。結論としては可能な限り衣服や帽子で紫外線を防ぐのが一番です。


日焼け止めはたしかに紫外線を防いでくれるのですが、保湿薬とは違って基本的には肌に有害な物質を含んでいるので可能な限り、使用しないのが賢明でしょう。患部に塗るのは絶対に避けるべきです。


食事

スキンケアと同じくらい食生活の改善も重要です。味付けが濃い、辛みが強い、脂肪分の多い食事は身体内に熱を生じやすくしてしまいます。そうなると掻痒感や炎症が助長されてしまいますので控えめにしましょう。


過剰な水分、特に冷えた清涼飲料水の摂り過ぎは脾胃(消化器)のはたらきを鈍くしてしまうので注意が必要です。脾胃は血や気の「製造工場」になりますので、脾胃が弱まってしまうと血虚や気虚におちいりやすくなってしまいます。


食事のポイントとしては和食中心に腹八分目が質的にも量的にも良いでしょう。そうはいっても味の濃いものやつらいものも食べたくなるのが人間です。これらは「食べてはいけないもの」ではなく「食べ過ぎてはいけないもの」ですので、やや控えめな量で他の食品と併せて食べることは問題ありません。冷えたアイスクリームなども温かいお茶と一緒に食べるなどの工夫をして頂ければと思います。


アレルゲン対策

アレルゲンの除去はアレルギー反応を未然に防ぐ意味でも不可欠です。アレルゲンを探し出す検査でどのような物質に過敏に反応しやすいかを知っておけば症状の悪化を未然に防ぐことができます。


過去にご来局された方で掃除をするたびに症状が悪化するという方がいらっしゃいました。その方はハウスダストにアレルギーがあったので積極的に掃除をしていたのですが、結果として掃除機の排気で舞い上がったホコリに反応してしまったようです。後に長袖とマスク着用で掃除をしたら症状が悪化しなくなったとのことでした。


その他の注意点

寝ている時など無意識に皮膚を掻いてしまうことを防ぐのは非常に難しいです。そこで創傷を防止するためにあまり爪を長く伸ばさず、掻いても皮膚を傷つけない状態にしておくことも有効です。他にも手から患部に細菌が移らないように、常に手は清潔にしておくことも大切です。


アトピー性皮膚炎を悪化させる要因であるストレスを溜めないことは重要です。その一方でこれは非常に難しい課題ともいえます。そこでストレス軽減の具体策としては睡眠時間と休日をしっかりと確保することといえます。睡眠不足や過労によって蓄積した疲労は皮膚を乾燥させてしまう血虚に繋がってしまいます。


アトピー性皮膚炎の改善例


改善例1

患者は30代前半の男性・会社員。幼い頃はハウスダストに反応するアレルギー性鼻炎や喘息を持病としており、さらに両腕と膝の関節部分を中心とした乾燥をともなうアトピー性皮膚炎に悩まされていました。


成人してアレルギー性鼻炎などは自然に治りましたが、アトピー性皮膚炎だけは上半身を中心に残りました。定期的に皮膚科に通って保湿薬とmediumからstrongレベルの副腎皮質ステロイド薬を処方されており、使用すると症状は落ち着くも根本的に体質改善したいと考えて当薬局にご来局。


この方は顔色が悪く、黒ずんだ色をしていました。唇もやや紫がかった赤色。アトピー性皮膚炎の患部は赤みが目立ちかゆみも強く、寝ているうちに無意識に掻きむしってしまうこともあるという。他にも「仕事中もいつの間にか掻いてしまうことがあり、黒いノートパソコンに白い皮膚のカスがポロポロと落ちていることがある」とのこと。


この方には血の力を増し皮膚を栄養する地黄と当帰、血の巡りを改善する川芎、炎症を抑える黄連や山梔子などから構成される漢方薬を服用して頂きました。そして、傷の目立つ患部には皮膚の再生を促進する外用薬の紫雲膏を塗って頂くことにしました。


それにくわえて日頃から多く摂っているという冷えた飲み物や食べ物、乳製品、糖分や脂肪分を多量に含んだものは控えるようアドバイス。これは飲食物から血や気を生み出す脾胃の負担を軽減するためです。


漢方薬を服用して5ヵ月ぐらいが経過した頃、乾燥によって剥がれおちてしまう皮膚の面積が目に見えて小さくなってきました。かゆみも赤みの減退と一緒に徐々に軽減されてきたとのこと。しかしながら、アトピー性皮膚炎は他の疾患以上に油断できないので、継続の服用をお願いしました。


それから真夏の時期に多く汗をかくなどして一時的に悪化しましたが、季節が落ち着いてくる頃には外見的にもご本人の主観的にも症状はかなり改善されました。顔色も見るからに血行の悪い暗い色からうすい赤みを含むものに。現在もかゆみが増せば荊芥や連翹、乾燥が進めば何首烏などを含む漢方薬に微調整を続けながら安定した状態を保っています。


改善例2

患者は30代後半の女性・税理士。昔から四肢の関節や首まわりにジュクジュクした湿疹ができやすく、特に湿度の高い梅雨や夏場ではひどくなる。皮膚科で副腎皮質ステロイド薬やプロトピック軟膏を処方されていましたが症状はなかなか緩和しませんでした。


仕事で会社訪問を行う機会も多く、夏場は発汗によって症状がより一層悪化するという。「汗をそのままにしていると本当に悪くなるので、こまめに拭き取るようにしている」とのこと。この年の夏は例年以上に暑さが厳しく疲労感や倦怠感も顕著で、このままでは仕事だけではなく日常生活にも支障が出ると悩み、当薬局にご来局。


この方のご症状は典型的な湿潤をともなうアトピー性皮膚炎でした。湿疹にくわえて皮膚表面にヒリヒリとした熱感があると強く訴えられたので、熱を抑えることも充分に考慮する必要がありました。症状は一目で分かるほど重かったため、根気強く生活改善と漢方薬の服用をお願いしました。


皮膚の状態は湿度が高くなると悪化することを受けて過剰な水分を代謝する麻黄、熱を鎮める石膏などから構成される漢方薬を服用して頂きました。そしてストレスと皮膚は意外にも密接な関係があるので、睡眠時間の確保や過剰な労働は繁忙期を除いて控えて頂くようアドバイス。食事も外食が多いということなので、できるだけ和食を摂るように伝えました。


患っている期間が長かった分、治療は難航しましたが服用から約半強が経った頃には「服に血やジュクジュクが付かなくなったし、かゆみも楽になった」とおっしゃっていだけました。ある程度、アトピー性皮膚炎の症状が沈静化してきた頃、胃腸が弱く体力のない点が病気の根本的な原因と定めて脾胃の状態を底上げする人参や黄耆などから構成される漢方薬に変更。


これは脾胃の状態が悪いと水分代謝にも悪影響(この方のケースでは水っぽさの目立つ湿疹)を及ぼすことがあるからです。漢方薬を変更してまた半年が経った頃には黄色をともなうジュクジュクしていた皮膚も凹凸の少ない皮膚に変わっていました。かゆみもピークの1/5程度とのこと。


その後は皮膚を栄養する血に重点を置いた漢方薬にシフトするなどして現在にいたっています。皮膚に抵抗力もついたためか毎年ひいていた風邪にもかからなくなり、慢性的な疲労感も徐々に改善してゆきました。


改善例3

患者は30代後半の女性・学芸員。幼少から乾燥肌でしたがあまり気にすることなく過ごしていました。しかし、数年前の冬に強いかゆみにおそわれ皮膚科を受診。そこで初めてアトピー性皮膚炎と診断され、保湿を中心とした外用薬が処方されました。一方で真面目に保湿を行ってもなかなか症状が落ち着かなかったので当薬局にご来局。


皮膚の状態は訴えの通り、乾燥してやや粉をふいたような状態でしたが皮膚が脱落したりジュクジュクしたりするような顕著な外見的異常はあまり感じられませんでした。肌以外の症状としては貧血があり、過去には鉄剤を服用していたことも。「座っていることが多い仕事なので、急に立ち上がると乗り物酔いしたようにフラフラして気持ちが悪くなる」という。


この方の症状は血が不足することによって起こる皮膚の栄養不足と考えて、血を補う当帰、地黄、何首烏、かゆみを抑える荊芥などから構成される漢方薬を服用して頂きました。勤務している美術館は展示品を守るため常に乾燥しているとのことでしたので、それまでは入浴後にのみ行っていた保湿をよりこまめにお願いしました。


漢方薬を服用し始めて5ヵ月が経過する頃には皮膚のカサカサ感も薄らぎ、やや薄黒かった肌の色も薄いピンク色になってきました。これは血が補われ、さらに血の流れも改善したからと考えられました。


そして、一番の問題であったかゆみも貧血による立ちくらみや頭重感と歩調を合わせて鎮まっていきました。現在は貧血防止と体力保持も目的として上記の漢方薬に微調節をくわえた形で継続的に服用を続けて頂いています。


おわりに


アトピー性皮膚炎を患っている方の多くは長年の間、その症状に苦しめられています。当薬局にいらっしゃる方の中にも「症状は生まれた時から」というケースもしばしばです。漢方薬による治療も一朝一夕にはゆきません。さらに漢方薬「のみ」でこの病気に立ち向かうのは難しいと言わざるをえません。しかし漢方薬、西洋薬、そして生活習慣の改善という「総力戦」で症状を改善される方はとても多くいらっしゃいます。


当薬局では西洋薬だけを使用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしばご来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、症状が好転する方をみているとアトピー性皮膚炎と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、アトピー性皮膚炎にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 ニキビ(吹き出物) 】と漢方薬による治療

ニキビ(吹き出物)とは


ニキビとは毛穴で起こった炎症によってできる凸状の丘疹を指します。しばしばニキビは吹き出物とも呼ばれますが、専門的には尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)という同一の病気です。ニキビは性別や年齢を問わず幅広く起こる肌トラブルですが、特に思春期に多くみられる傾向があります。発症する場所としては主に額、両頬、顎の下などの顔面部が多く、他にも背中や胸部にも起こります。


ニキビ(吹き出物)の原因


ニキビができる原因は毛穴における皮脂の過剰分泌とそれによるアクネ菌の増殖です。思春期にニキビができやすい理由は、この時期に盛んに分泌される男性ホルモン(女性でも男性ほどではありませんが分泌されています)の影響で、毛穴の近くにある皮脂腺細胞から盛んに皮脂が分泌されているからです。


皮脂が多く分泌されると額の周辺などに複数の膨らみが生まれ、肌が皮脂でテカテカとしているのがわかるようになります。毛穴に皮脂がたまるとそれを好むアクネ菌が繁殖して炎症を起こし、毛穴が赤く凸状に盛り上がったニキビができてしまいます。


ニキビ(吹き出物)の症状


ニキビは炎症が強くなると患部に痛みやかゆみを生じやすくなります。そうなるとつい気になって触れたり、強引に皮脂を出そうとすると手についている雑菌が移り症状が悪化しやすいです。ニキビが長期化するとアクネ菌が生み出す酵素によって皮膚が深く傷つき色素が沈着した目立つニキビ痕(ニキビ跡)ができてしまいます。

ニキビには「肌の病気」という面以外に、ニキビを起点とした二次的症状も問題となります。具体的にはニキビができることでお化粧の幅が制限されたり、気持ちが後ろ向きになってしまう、ニキビが気になって集中力が低下してしまうといったケースです。


ニキビ(吹き出物)の西洋医学的治療法


西洋医学的なニキビの治療はアクネ菌を除くための抗生物質、毛穴の皮脂のつまりを防ぐレチノイド製剤、皮脂の分泌を抑える硫黄製剤などがもちいられます。その他にも男性ホルモンが優位な状態を抑える低用量ピルも使用されることがあります。


ニキビ(吹き出物)の漢方医学的解釈


漢方の視点からニキビを考えると、その原因は大きく分けて3つ挙げられます。まずひとつは辛いものや脂っこいもの、アルコールなどを多く摂る生活を送ったことで身体内に過剰な熱がこもってしまうケースです。生活の不摂生などで蓄積された熱は肌に炎症を起こし、赤みやかゆみの強いニキビになります。


もうひとつはクーラーの使い過ぎなどで身体を冷やしたり、もともと冷え性の方に外邪の一種である風寒邪が取り付いてきたケースです。風寒邪が肌を侵すと気血の流れが妨害され、炎症はあまりみられない白いニキビができやすくなります。


最後に血の滞りである瘀血(おけつ)によってもニキビ、特に赤黒いニキビができやすくなります。瘀血があると赤黒いニキビの他に顔色は暗色化し、肌にはアザができやすくなります。女性の場合は生理痛が強かったり、生理不順が目立つようになります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬(吹き出物)を用いたニキビの治療


赤みが強くかゆみも強いニキビには過剰な熱を鎮める清熱薬を含んだ漢方薬がもちいられます。清熱薬には黄連、黄芩、黄柏、山梔子、石膏などが代表的です。赤いニキビにくわえて便秘もあるようなら便通促進作用と熱を抑える力に優れた大黄を含んだ漢方薬も検討されます。


白く化膿が目立つニキビには風寒邪を発散させる辛温解表薬を配合した漢方薬が使用されます。繁用される辛温解表薬には麻黄、桂枝、生姜、荊芥、防風、細辛などが挙げられます。しばしばここに排膿作用を持った桔梗もあわせてもちいられます。


瘀血による赤黒いニキビに対しては血の巡りを改善する活血薬を中心とした漢方薬がもちいられます。具体的な活血薬には桃仁、川芎、牡丹皮、紅花、延胡索などが挙げられます。すでに挙げた大黄は熱を鎮める力にくわえて、血を巡らす作用もあるので瘀血によるニキビにもしばしば使用されます。


代表的なニキビのパターンを3つ挙げて解説してきましたが、実際の漢方薬をもちいたニキビの治療はここまで単純なものではありません。多くの場合はニキビの状態とそれ以外の症状なども考慮して、異なる性格の生薬をバランスよく含んだものが使用されます。


生活面での注意点と改善案


ニキビは生活習慣と関係が深い肌トラブルといえます。特に食生活において辛いもの、脂っこいもの、砂糖が多く含まれているもの、さらにアルコール度数の強いお酒も炎症を助長させやすいので控えましょう。睡眠不足やストレスの蓄積もホルモンの分泌異常を引き起こしやすくなるので注意が必要です。


生活習慣以外の注意点としては、できるだけニキビに触れないようにすることが大切です。まず手で無理やり皮脂を押し出したりすると、手についている雑菌によって患部の炎症が悪化してしまいます。念のためにニキビがあるときはいつも以上に手洗いを心がけてください。手以外にも髪がニキビにあたるのも刺激を避ける意味で避けましょう。


最後に洗顔ですが、基本的には1日1回、あまりゴシゴシと洗うのではなく洗顔フォームを軽く泡立てて優しく洗いましょう。1日に何回も洗うのは過剰な刺激なる可能性もあるのでお勧めできません。


ニキビ(吹き出物)の改善例


患者は20代後半の女性・会社員。慢性的なニキビが大学生の頃から続いている。皮膚科も受診して抗生物質やビタミンCを服用してもなかなか改善がみられなかったとのこと。テレビCMで有名な洗顔フォームなどを試すも赤みの強いニキビは減らなかった。社会人になるとニキビ以外にも生理前のイライラ感も目立ち始めたことをきっかけに当薬局にご来局。


ご来局当時のニキビの状態は両頬から顎の下にかけて赤い炎症の目立つニキビと白く化膿したニキビが混在していました。そこでまずは熱を鎮める力に優れている黄芩や膿を出す作用がある桔梗などを含んだ漢方薬を服用して頂きました。


服用開始から3ヵ月が経過すると、目に見えて活発だった炎症は鎮まっていました。同じ漢方薬の継続を考えましたが、生理前の情緒不安定が現れると一緒にニキビも増える傾向がありました。そこで柴胡や薄荷といった気の巡りを改善する漢方薬へ変更を行いました。


変更から2ヵ月が経つと月経前症候群(PMS)による不快感とニキビは大幅に改善されました。変更後の漢方薬を服用していると仕事が忙しい時もあまりカリカリしなくなったということで、この方には同じ漢方薬を継続して頂いてきます。


おわりに


ニキビはアトピー性皮膚炎や乾癬などの他の肌の病気と比較して軽く扱われがちですが、慢性化すると大きなニキビ痕(ニキビ跡)が残ることもありますので軽視はできません。女性の場合はお化粧に制限ができてしまうなど美容上の問題も生じやすいです。


漢方薬をもちいたニキビの治療は肌のみをみるのではなく、心身全体のバランスの崩れなどを考えて治療がおこなわれます。したがって、漢方薬を服用するとニキビとは一見すると関係のなさそうな症状(たとえば生理不順や生理痛など)もあわせて改善することもできます。ニキビでお悩みの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

【 蕁麻疹(血管性浮腫を含む) 】と漢方薬による治療

蕁麻疹(じんましん)とは


蕁麻疹とはなんらかの原因で皮膚にかゆみをともなった紅斑(こうはん)や膨疹(ぼうしん)が生じる病気です。紅斑とは皮膚の赤みであり、膨疹とは皮膚がやわらかく丸みを帯びて盛り上がった状態です。蕁麻疹はニキビに代表される湿疹のように傷が残ることはなく、症状が治まると患部は何事もなかったようにもとに戻るという特徴があります。


蕁麻疹は現れてから数分で消えるものから、数ヵ月以上も症状が出続けるケースもあります。生じる場所もさまざまで、身体の一部に現れるものから全身に生じることもあります。蕁麻疹をもたらす原因はアレルギー性のものと非アレルギー性のものに大別されます。アレルギー性のものは青魚やソバなどの食品が代表的です。そして非アレルギー性のものは圧迫、寒暖、日光といった物理的な刺激が含まれます。


やや余談になりますが蕁麻疹における「蕁麻」とはイラクサとも呼ばれる植物の名前です。このイラクサの葉には小さなトゲがあり、触れるとアレルギー反応による炎症が起こることが「蕁麻疹」の由来となっています。


蕁麻疹(じんましん)の原因


蕁麻疹を引き起こす原因は大きくアレルギー性のものと非アレルギー性のものに分けられます。アレルギー性の蕁麻疹は特定の物質と肥満細胞(マスト細胞とも呼ばれます)が結合するとヒスタミンが放出されます。このヒスタミンが皮膚のかゆみや腫れを起こします。


アレルギー反応を起こす原因は食品や薬などの化学物質の摂取、動植物との接触によって起こります。具体的にはサバ、エビ、カニなどの魚介類、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類、大豆、小麦、ナッツ、ソバなどの穀類、トマト、キャベツ、ジャガイモ、ホウレンソウなどの野菜類、レモン、リンゴ、キウイ、バナナなどの果物、卵や乳製品、食品添加物や薬、ダニやペットの毛、虫刺されや植物との接触などが代表的です。これらの原因物質はアレルゲンとも呼ばれます。


非アレルギー性の蕁麻疹の原因は物理的な刺激、気候や環境、体調の変化などが挙げられます。 具体的には皮膚の圧迫や摩擦、寒冷や温熱、日光、運動、発汗、疲労、精神的なストレス、感染などが引き金となって肥満細胞からヒスタミンが放出されると考えられています。


このように蕁麻疹はさまざまな刺激によって引き起こされ、体質による個人差が非常に大きいことが知られています。その為に原因が特定できるケースは多くはなく、医療機関で検査を行ってもその原因を突き止められないこともしばしばです。一方で、漢方薬を構成する生薬には食品としてもちいられているもの(具体的には小麦やミカンなど)も多く存在するので、わかっている範囲で治療者にアレルゲンを伝えることが大切です。


蕁麻疹(じんましん)の症状


蕁麻疹の主な症状は皮膚の紅斑や膨疹とかゆみです。これらは局地的に点状や線状に生じる場合から、広範囲にまるで地図のように現れる場合もあります。患部に赤みや膨らみやが起こるのは肥満細胞から放出されたヒスタミンが血管を拡張し、血中の水分が血管外へ漏れ出た結果です。


頻度は相対的に少ないですが、血管性浮腫と呼ばれる口唇、まぶた、手足、喉などが腫れてしまうタイプの蕁麻疹も存在します。血管性浮腫の場合、かゆみはともないませんが患部にヒリヒリとした熱感を感じることがあります。喉の腫れが強く現れると食べ物を飲み込みにくくなったり、息苦しさを覚えるようになります。血管性浮腫はクインケ浮腫と呼ばれることもあります。


血管性浮腫を含めた蕁麻疹の症状は現れてから短時間で消えるものから数ヶ月も続くケースがあり、症状の現れ方と同様に個人差が大きいです。一方で掻きむしったりしなければ患部に傷痕が残ることはありません。


蕁麻疹(じんましん)の西洋医学的治療法


蕁麻疹の西洋医学的な治療にはヒスタミンのはたらきを抑える抗ヒスタミン薬が主にもちいられます。効力は塗り薬より内服薬の方が優れている一方、眠気や集中力の低下といった副作用の頻度も高くなる欠点があります。このような副作用が目立つ場合はマスト細胞からヒスタミンが放出されることを抑える抗アレルギー薬ももちいられます。


蕁麻疹(じんましん)の漢方医学的解釈


血管性浮腫を含めて漢方の立場から蕁麻疹を考えると、急性蕁麻疹は外邪(特に風熱邪や風湿邪)が身体を侵した結果と考えます。慢性蕁麻疹は食生活の乱れや精神的なストレスなどによって身体内に熱が生まれたことで発症することが多いです。これ以外にも気が不足すると抵抗力が低下して容易に外邪の侵入を許してしまいます。くわえて、血の不足は肌の乾燥を招きちょっとした刺激に対しても敏感になってしまいます。


現実的には過労などによって気血が不足したことで外邪が侵入し、その侵入によってより気血が消耗して慢性的な蕁麻疹になってしまうケースが多いと考えられます。したがって、ただ皮膚の状態を考えるだけではなく、全身の症状や体質から蕁麻疹の原因を考えることが大切になります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた蕁麻疹(じんましん)の治療


急性蕁麻疹の治療には皮膚の赤みやかゆみを鎮める清熱薬、外邪を発散させる解表薬を組み合わせた漢方薬が主に使用されます。慢性蕁麻疹に対しては少なからず気血の不足が関係しているので、それらを補うことが不可欠です。したがって、蕁麻疹の症状の現れ方や体質から清熱薬、解表薬、補気薬や補血薬のバランスが調節された漢方薬を治療にもちいます。


その他にも精神的なストレスによって蕁麻疹が起こるケースでは気の流れを改善する漢方薬、蕁麻疹にくわえて肌にアザやシミが目立つ場合は血の流れをスムーズにする漢方薬も検討されます。熱を冷ますだけではなく、寒冷蕁麻疹の場合は身体を温めるような漢方薬も使用されます。


生活面での注意点と改善案


蕁麻疹の予防にはそれを引き起こしているアレルゲンの除去が最も大切です。ホコリやダニといったハウスダストに対してアレルギーを持っている方は部屋や布団の掃除、雑誌や書類を放置しない、空気清浄器を使用するといった対策が有効です。


食品に対してのアレルギーがあるかわからない場合は食べた食品と症状の現れ方を記録した日記をつけることが有効です。食べ物以外にも化粧品や服用している薬などもチェックすると良いでしょう。


蕁麻疹(じんましん)の改善例


改善例1

患者は30代前半の女性・看護師。日常的に白衣と肌のすれ合う部分(首や腕など)に蕁麻疹が現れることに悩まれていました。お仕事柄、動き回ることも多いのでその度に患部がすれて、よりかゆみと赤みが増す悪循環に陥っていました。白衣の材質を変えたり、塗り薬を使用してもなかなか良くならず当薬局へご来局。


ご来局時も蕁麻疹のご症状があり、特にこすれやすい首の後ろには襟の形に沿ってやや膨らんだ蕁麻疹が見て取れました。特にご症状は夏場や日に当たると悪化しやすいという。この方には過剰な熱を抑える黄連や連翹を含む漢方薬を服用して頂きました。


服用から1ヵ月半が経つとイライラして仕事に集中できなくなるような強いかゆみはほぼ現れなくなっていました。調子が良かったので同じ漢方薬を継続して頂きましたが、数ヵ月が経っても症状改善における「最後の一歩」がうまくゆきませんでした。


やや治療が停滞している頃に生理前になると蕁麻疹が起こりやすいと伺ったので、気血の巡りをよくする漢方薬へ変更。新しい漢方薬に変更して2ヵ月が経過すると生理前の蕁麻疹にくわえて胸の張り感やイライラ感も含めて大きく症状が改善されました。この方には季節やご症状に合わせて漢方薬を調節しつつ、服用を継続して頂いています。


改善例2

患者は40代後半の男性・会社員。30代の頃から突然、口唇が大きく腫れるようになりましたが、数時間が経つと徐々に治まってくるので特に病院には行かず過ごされていました。しかし、40代になると徐々に腫れる頻度やヒリヒリとした不快感が多くなり皮膚科を受診。初めて血管性浮腫と診断されました。


皮膚科から抗ヒスタミン薬を処方されましたがうまく改善されず、他の抗アレルギーとの併用を開始。それでも改善は進まず、毎日服用する薬の量が増えてゆくことが不安になり当薬局へご来局されました。


ご来局されたときに血管性浮腫が現れている時の写真を見せて頂き、口唇が1.5倍ほど腫れあがっていることが確認できました。ご症状がある時は強い熱感を患部に覚え、時にはまぶたも腫れてしまうという。


この方には熱を鎮める力に優れた石膏や知母、水分代謝を改善する蒼朮や木通を含んだ漢方薬を服用して頂きました。漢方薬にくわえてやや多かったお酒の量を減らして頂き、あわせて辛いものを一緒に摂るのを控えてもらいました。


漢方薬を服用して半年が経過する頃には口唇が引っ張られるように腫れることはなくなり、ヒリヒリ感を覚えることもなくなりました。その後も症状が強く出てしまったときは抗ヒスタミン薬を併用して頂く形で血管性浮腫に悩まされることはほぼ解消されました。


おわりに


蕁麻疹はかゆみによって仕事や勉強の集中が途切れてしまったり、うまく睡眠がとれなくなってしまうこともしばしばです。最近はアレルギーに対して優れた西洋薬が多く開発されていますが、それでも蕁麻疹に悩まれている方は少なくありません。


漢方薬はその方の蕁麻疹が現れるパターンや症状の現れ方、皮膚以外の状態にも着目して西洋薬とは異なったアプローチから改善を目指してゆきます。慢性的な蕁麻疹や血管性浮腫にお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

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