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【 起立性調節障害 】と漢方薬による治療

一二三堂薬局と起立性調節障害


当薬局では長年、起立性調節障害に有効な漢方薬の研究を重ねてまいりました。その理由はふたつあります。ひとつは起立性調節障害はお子様にとても多い病気であり、多くのご両親が西洋薬の副作用を心配して充分な治療ができないことに悩まれているからです。そしてもうひとつは漢方薬は起立性調節障害の改善にとても有効ということを経験的にも実績面でも知っているからです。


このページでは起立性調節障害に対する漢方治療について解説させて頂きます。当薬局の情報につきましてはページ上段のアイコン、または下記のリンクをご覧ください。


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起立性調節障害とは


起立性調節障害とは主に学童期の時期に起こる朝の起床困難、立ちくらみ、めまい、疲労感、頭痛、腹痛などを伴う病気です。しばしば起立性調節障害はその英語表記であるOrthostatic Dysregulationの頭文字をとって「OD」とも呼ばれます。


起立性調節障害の病態を簡単に表現すれば主に低血圧症による一時的な脳の虚血(きょけつ)状態といえます。虚血とは何らかの理由で血流が低下している状態を指します。やや脱線しますが、しばしば耳にする貧血は血液における赤血球の濃度が低下した状態ですので、虚血とは異なった病態です。貧血に関しましては 貧血と漢方薬による治療のページをご参照ください。


脳における虚血が起こる原因は成長途上のお子様は血圧をコントロールする自律神経(特に交感神経)がまだ完全に機能していないためと考えられています。しかしながら、立ちくらみやめまいのような起立性調節障害の症状が現れていても血圧に問題がないケースもあります。この点に関しましては後述の体位性頻脈症候群をご参照ください。


起立性調節障害は決して珍しい病気ではありません。データによって多少の変動幅はありますが学童期の5~10%が患っているといわれています。この確率から単純に考えると30人のクラスに1人以上の起立性調節障害患者がいる計算になりますので、その頻度の高さがわかります。起立性調節障害には男女差も認められており、多くの場合は女子に多いとされています。そしてこの傾向は中学生以降により顕著になるといわれています。


起立性調節障害の原因


起立性調節障害は主に10代前半以降の学童期のお子様に多く見られる病気です。その理由は血圧を調節する自律神経がまだ未発達なためと考えられています。


「自律神経」とは自律的、つまり意思とは無関係に自動的に調節を行う神経です。自律神経の中でも交感神経は血圧を上昇させる機能を司っており、この交感神経がうまく働かないと充分に血圧が上がらず起立性調節障害特有の症状が現れてしまいます。


この自律神経はしばしば精神的なストレスなどによってうまくコントロールできなくなってしまいます。したがって、起立性調節障害は自律神経の未発達だけではなくストレスを受けやすい多感な性格なども発症に関与していると考えられます。


起立性調節障害は学童期のお子様に多い自律神経失調症のひとつといえます。しかし、近年の調査によって中学生以上の高校生や社会人にも起立性調節障害の諸症状が見られることがわかってきました。この点からも起立性調節障害は「自律神経がうまく働かない子ども特有の病気」とはいえないという指摘もあります。


起立性調節障害の症状


起立性調節障害を患うと低血圧によって脳に虚血が起こり、それを補うために頻脈が現れやすくなります。脳における虚血と頻脈が起こることによって起立性調節障害は多彩な症状を引き起こします。


起立性調節障害の具体的な症状としては朝起きができない、長時間の起立ができない、慢性的な疲労感、めまいや立ちくらみ、吐気や食欲不振、腹痛、頭痛、動悸、息切れ、胸の苦しさ、顔色の悪さ、寝つきの悪さ、イライラや短気などが挙げられます。


これらの症状はしばしば類似した症状を呈する貧血と間違われますが、血液検査では赤血球の濃さを示すヘマトクリット値に異常は出ません。


起立性調節障害の大きな特徴として、朝の起床ができないという症状に代表されるように、午前中に症状が悪化しやすい点が挙げられます。逆にいえば午後になると症状が軽減されるというのも起立性調節障害の特徴です。これは時間の経過とともに血圧を上昇させる自律神経である交感神経がはたらき始めるからです。


さらに起立性調節障害には「季節性」もあります。冬は寒いので血管から大切な熱が逃げ出さないように血管の収縮が起こります。結果的に血圧が上昇しやすい状態となり、低血圧によって引き起こされていた起立性調節障害の症状が現れにくくなるのです。上記の午前と午後の関係のように温暖な春から夏は、秋から冬とは反対に症状が現れやすくなってしまいがちです。


起立性調節障害において問題となるのはその症状だけではありません。朝に起床できない結果、学校に遅刻したり欠席することが多くなり徐々に学校から足が遠のいてしまうことが「二次的な症状」として問題となります。


さらに時間の経過とともに症状が緩和するので午後には体調も回復することが、他者からは「学校をさぼっている」「怠けている」と見られてしまいがちです。それに加えて上記で説明したとおり、起立性調節障害は春に悪化しやすい傾向があります。


大切な学校の「新シーズン」でつまずいてしまうこともマイナスにはたらきがちです。起立性調節障害への理解不足や季節性などが相まって不登校を助長してしまうこともしばしばです。


起立性調節障害の分類


起立性調節障害はその症状によって、起立直後性低血圧、神経調節性失神、遷延性(せんえんせい)起立性低血圧、そして体位性頻脈症候群の4つに分類されます(しばしばサブタイプとも呼ばれます)。下記では簡単に4つのサブタイプの特徴を解説します。


起立直後性低血圧

起立性調節障害の中でも最も多くみられるのがこの起立直後性低血圧です。その名前の通り、頭を上げた直後に顕著な低血圧が起こり、徐々に回復してゆきます。起立直後性低血圧によって引き起こされる症状としてはめまい、立ちくらみ、脱力感などが挙げられます。


神経調節性失神

神経調節性失神では起立しているときに血圧の低下が起こり、意識低下(失神)を引き起こします。その他の症状としては顔色の蒼白化、吐気、冷や汗、動悸なども現れることがあります。神経調節性失神による症状とはやや異なりますが、急な意識の低下による転倒時の打撲なども問題となります。


遷延性(せんえんせい)起立性低血圧

遷延性起立性低血圧では頭を上げてから数分後に血圧の低下が起こります。現れる症状は動悸、冷や汗、吐気、動悸、頭痛、脱力感などが挙げられます。名前にある「遷延」とは「長引くこと」「のびのびになること」を意味します。


体位性頻脈症候群

体位性頻脈症候群においては血圧の低下は起こらず、その一方で心拍数の増加がみられます。体位性頻脈症候群による症状は立ちくらみ、ふらつき、脱力感、頭痛などが挙げられます。起立性調節障害において起立直後性低血圧に次ぐ頻度といわれています


起立性調節障害の西洋医学的治療法


起立性調節障害は自律神経、特に交感神経のはたらきが機能しないことによって起こる低血圧が主な原因でした。したがって、西洋医学的治療法は薬物を用いて血圧を上昇させることが基本となります。


血圧を上昇させるために交感神経を優位にするリズミック(一般名:メチル硫酸アメジニウム)やメトリジン(一般名:ミドドリン塩酸塩)、血管の拡張を防ぎ血圧を維持させるジヒデルゴット(一般名:メシル酸ジヒドロエルゴタミン)が主に用いられます。しかしながら、これらの薬はしばしば頭痛や動悸、食欲不振や吐気などの消化器系の副作用が起こるため慎重に用いられます。


起立性調節障害の中でも血圧低下が起こらない体位性頻脈症候群の場合は頻脈を鎮めるインデラル(一般名:プロプラノロール)も使用されます。インデラルを用いる際は血圧が下がり過ぎることで起こる重だるさやめまい、気管支の収縮による息苦しさなどに注意が必要です。


起立性調節障害の漢方医学的解釈


起立性調節障害に代表される諸症状は気の不足である気虚(ききょ)や血の不足である血虚(けっきょ)に多くが当てはまります。この気と血の両方の不足を気血両虚(きけつりょうきょ)とも呼びます。したがって、起立性調節障害はおおむね気血両虚の状態と考えられます。


そもそも気とは一種の生命エネルギーのようなもので、気の不足(気虚)によって慢性的な疲労感、食欲不振、めまいや立ちくらみなどが起こります。


血は身体を栄養するものであり、血の不足(血虚)によってこちらも慢性的な疲労感、動悸や息切れ、頻脈、顔色の蒼白化、肌の乾燥や荒れ、不安感や不眠症などが引き起こされます。血はもともと気を「原材料」として生まれるので、気の不足は放置されると遅かれ早かれ血の不足に至ります。


起立性調節障害は気血両虚以外にも気滞(きたい)の要素も少なからず含んでいるでしょう。気滞とは気がうまく巡らない状態であり主に精神的ストレスや生活の乱れ、そして気虚をきっかけに起こります。気滞の症状としては胸や腹部の張り感、息苦しさ、胸痛や腹痛、吐き気や食欲不振、気分の落ち込みなどが挙げられます。


このように起立性調節障害は気や血の不足、さらには気の滞りなどが複雑に絡み合って起こっている複合的な病態と考えるのがより妥当でしょう。これらは決して単純な病態ではありませんし、上記の病的状態を発端としてさらに二次的な病態(血や津液の滞りなど)が含まれるケースも実際には見受けられます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた起立性調節障害の治療


起立性調節障害には多くの場合、気血両虚が深く関与していると考えられます。したがって、不足している気や血を補うことが起立性調節障害治療の中心的な方針となります。


まず気虚を引き起こす原因は多いうえに複雑なので、ここではしばしば遭遇するケースについて紹介してゆきたいと思います。気虚を引き起こす最も多い原因は脾胃(消化器)の力が不足している場合です。この状態をしばしば脾虚(ひきょ)とも呼びます。


食欲不振、下痢や軟便が続いているような脾虚の方は十分に食べ物が消化吸収されず、栄養素がうまく身体に取り込めていないことが多いです。


このような方は人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などの脾胃の力を高める生薬、補気薬(ほきやく)と呼ばれる生薬から構成される漢方薬を服用するのが有効です。徐々に食欲がついて消化器の調子も良くなれば気も充実してくるでしょう。


食欲は普通にある方でも気虚の症状が見られる場合は補気を中心とした漢方薬を使用します。これは補気薬自体にも直接的に気を補う効果があるからです。


精神的なストレスなどによって胸や腹部の張り感、胸痛や腹痛、気分の落ち込みなどの気滞症状が現れるケースでは、その対処も重要になってきます。


気の巡りが悪くなると脾胃のはたらきが弱まり、気虚を悪化させてしまうこともあるからです。気の流れを改善する理気薬(りきやく)としては柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などが代表的です。


気の不足は結果的に血の不足を起こすことを考慮して気虚の段階から血を生み出す補血薬(ほけつやく)を用いることも多いです。具体的には地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などが使用されます。


血虚に陥ると動悸や息切れ、さらに不安感や不眠症などの精神症状も現れやすくなるのでこれらの症状が顕著なら補血は欠かせません。


上記以外にも起立性調節障害を患っている方によって主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


起立性調節障害の改善例


患者は小学6年生の女児。昔から朝起きが苦手でお母様の手をわずらわせていたとのことですが、小学4年生の頃から立ちくらみや腹痛なども現れるようになってしまった。最初の頃はたまに遅刻してしまうくらいでしたが、腹痛が原因でしばしば欠席することも。


お母様も心配して近くの内科をいくつか受診しても単なる低血圧や虚弱体質と診断され、特に治療は行われなかった。その頃、新聞の起立性調節障害の記事が目にとまり、ことごとく娘様の症状に当てはまると感じて小児科を受診。全体的な症状から起立性調節障害と診断されました。


その後、受診した小児科で昇圧薬(血圧を上げる薬)が処方されましたが、服用することで朝は起きられるようになっても、頭痛がひどくなってしまい服用は中止。いくつか薬を変更して朝起きはできるようになっても動悸、吐気などがどうしても現れてしまい服薬は続けられませんでした。


病院での治療方針に悩まれていた頃、たまたまお母様が検索エンジンで「起立性調節障害」と検索しているうちに当薬局を知り、娘様と一緒にご来局されました。


ご様子を伺うとご自身の口から朝起きが苦手、腹痛や立ちくらみによる吐気が辛いとおっしゃられました。それ以外にも小児科から低血圧(収縮期血圧が約65mmHg)と軽度の貧血を指摘されているとのこと。全体的な外見も細身でやや顔色が青白い印象。「食事をすると腹痛が起こるのでは…」という心配から朝食はほとんど食べられていない。


娘様にはまず人参、白朮、甘草などから構成される気を補って脾胃の力を増す漢方薬を服用して頂きました。漢方薬を服用し始めて3~4ヵ月が経過した頃には声にも張りが出てきて、これまでは作業的に摂っていたという食事についても、少しずつ食欲も出てきたとのこと。腹痛はほとんど無くなっていました。


朝も徐々に起きられるようになってきましたが、まだ立ちくらみとめまいの症状に変化は出ませんでした。それを受けて気を補う生薬に加えて地黄や当帰といった血を補う生薬も含まれる漢方薬に変更しました。


血を補う生薬は胃腸の弱い方が服用するとまれに食欲の低下やもたれ感が現れるので慎重に用いられます。娘様の場合は徐々に脾胃が強くなっていたので変更を加えました。少々心配もしましたが問題なく服用され、半年が経った頃には立ちくらみや足元がフワフワするようなめまいも消えていました。午前中に症状が目立つ傾向はありますが、遅刻や欠席をしてしまうことは無くなったとのこと。


現在、娘様は中学生になり症状が出やすくなる春先くらいになると予防的に漢方薬をお求めにいらっしゃいます。特に症状自体は出ることも無く元気に過ごされているとのこと。お母様が受けさせている定期的な健診においても少々の低血圧を指摘される程度で貧血はまったく無し。今はテニス部と手芸部に所属されて、活発に過ごされています。


おわりに


起立性調節障害はまだ馴染みが薄い病気であり、午後になると症状が軽快することからしばしば「怠け癖」や「仮病」と疑われてしまうことも多いです。起立性調節障害を患う方は午後まで寝込んでしまうこともしばしばで、必然的に就寝時間は遅くなってしまいます。そうなると夜型の生活に移行してしまい、より一層、朝に起きれなくなってしまう悪循環にも陥りがちです。登校日数の減少をきっかけに学校から足が遠のき、不登校になってしまうケースも見受けられます。


起立性調節障害に有効な西洋医学的治療法も副作用の問題などから確立はされていません。漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。


当薬局では西洋薬を使用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、めまいや立ちくらみなどの症状が少しずつとれてくることから、起立性調節障害と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、起立性調節障害にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 高血圧症 】と漢方薬による治療

高血圧症とは


血液は心臓から押し出されて動脈へと至り、全身を巡ってゆきます。血圧とはこの血液が動脈の壁を内側から押す力(圧力)といえます。つまり、高血圧症とは血管にかかる圧力が高い状態、より血管に負担をかけてしまっている状態を指します。


厳密には最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上である状態を高血圧と定義します。ちなみに正常血圧は最高血圧が130mmHg未満であり、最低血圧も85mmHg未満の状態を指します。高血圧症と正常血圧の間に存在する領域は正常高値血圧と呼ばれます。


上記の「最高血圧(収縮期血圧)」「最低血圧(拡張期血圧)」はしばしば「上の血圧」「下の血圧」とも表現されます。収縮期とは心臓の左心室がギュッと「収縮」したタイミングを指します。勢いよく血液が動脈に押し出されるので、収縮期では最も血圧が高い状態となります。


一方の拡張期とは左心室が収縮を終えて「拡張」したタイミングであり、次の収縮に向けて左心室が準備している段階です。したがって、最も血圧が低い状態となります。高血圧症を診断する上でこの収縮期血圧と拡張期血圧の両方が考慮されます。


高血圧症の診断は医療機関で行われる測定のみの「一発勝負」で決まるものではありません。基本的には複数回、環境を変えて(自宅や24時間血圧が測定できる携帯機器の使用)得られた結果を基にして診断されます。


高血圧症の原因


高血圧症の原因の実に約90%は不明であり、このような高血圧症を本態性(ほんたいせい)高血圧症と呼びます。本態性高血圧症は生活習慣、体質、加齢などの影響が複合的に作用した結果、起こっていると考えられています。


その一方で残りの約10%は原因が分かっている二次性高血圧症です。その原因として多いのは「血圧のコントロールセンター」ともいえる腎臓の病気に起因するものです。糖尿病腎症、慢性腎炎症候群、腎硬化症、慢性腎臓病などが腎性高血圧を引き起こす原因となります。


それ以外にも割合は少ないですがコルチゾール、甲状腺ホルモン、アルドステロン、エピネフリン、ノルエピネフリンなどの血圧を上昇させるホルモンの異常分泌によっても二次性高血圧症は起こります。


高血圧症の症状


多くの場合、高血圧症になったからといって胃潰瘍における痛みのような自覚症状はありません。高血圧症がしばしば「silent killer(静かな殺し屋)」と呼ばれる理由は、高血圧症は治療されずに放置されやすく、いざ問題が生じたときには決定的な状況に陥っている場合が多いからです。


高血圧症の本質的な問題とは継続的に血管に高い圧力がかかることによって血管の動脈硬化が進み、結果的に血管がもろくなってしまう点です。高血圧を放置していると血管の崩壊によって起こる病気、たとえば心筋梗塞や脳卒中などが起こりやすくなります。もし、高血圧症にくわえて糖尿病や高脂血症などを患っている場合はそれらの影響でより一層、血管が弱くなり上記のような病気のリスクが高まります。


既に述べたとおり、高血圧症において目立った自覚症状はあまりありません。しかし、極端に高い高血圧の場合は頭痛、吐気と嘔吐、痙攣、視力障害、意識障害などが起こることもあります。


高血圧症の西洋医学的治療法


本態性高血圧症ならば、まずは運動療法や食事療法が用いられます。これは体重減少と血圧低下は正の相関関係が認められているからです。しかしながら、運動療法や食事療法で効果が不十分の場合には薬物療法の適応となります。


基本的には血管を拡張させて血圧を低下させる降圧薬が用いられます。代表的なものにノルバスクやアムロジン(ともに一般名:アムロジピン)、アダラート(一般名:ニフェジピン)、レニベース(一般名:エナラプリル)、ブロプレス(一般名:カンデサルタン)、ミカルディス(テルミサルタン)、ニューロタン(一般名:ロサルタン)、アーチスト(一般名:カルベジロール)などが挙げられます。血管を拡張する以外にも循環血液量を低下させる目的で利尿剤も使用されます。


これらの薬はシャープに血圧を下げる働きがある一方、血圧が上がってしまっている根本的な問題を解決するものではありません。したがって、降圧薬を服用しつつ生活習慣の改善を行うことは引き続き重要です。


高血圧症の漢方医学的解釈


身体の中には動的な陽(よう)と静的な陰(いん)の要素が存在し、お互いが牽制したり依存し合いながら平衡状態が維持されています。しかし、何らかの原因で陰の要素が減少してしまうと相対的に陽が優勢になります。


陽は動的であり熱性の性質を持っています。陽の相対的な優勢状態が続くと頭痛、のぼせ、口やのどの渇き、イライラ感、顔面紅潮、めまいなどの症状が出ます。病名を挙げるなら本ページで取り上げている高血圧症、他にも更年期障害、甲状腺機能亢進症などが該当します。


陽の亢進以外にも、精神的なストレスの蓄積によって気の巡りが悪くなることでも高血圧症は起こります。この場合、気の流れが悪くなっているので憂鬱感、精神不安、倦怠感、食欲不振、喉や胸の閉塞感、胃腸の張るような痛み、便通のトラブルなどが一緒に現れやすくなります。


上記のどれにも当てはまらない一方、体重が標準値からオーバーしている場合、身体のなかで有効に利用されていない水分の塊のような存在である水湿(すいしつ)や血液の滞りである瘀血(おけつ)が溜まっているケースが多いです。これらは気や血の流れを悪くしてしまう結果、高血圧症に繋がると考えます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた高血圧症の治療


陽の亢進(熱性の症状)が認められるケースでは陰を補いつつ、陽を抑えるという方針をとります。具体的な陰を補う滋陰薬(じいんやく)としては麦門冬、天門冬、地黄、芍薬などが挙げられます。陽を抑える潜陽薬(せんようやく)には竜骨や牡蠣などが挙げられます。竜骨や牡蠣は鎮静効果もあるので精神的なストレスによって血圧が上昇しやすい方には最適です。


イライラ感やホットフラッシュのようなのぼせ感といった熱性症状がより顕著な場合は熱を鎮めることを得意としている黄芩、黄連、黄柏、山梔子、知母、石膏なども併せて使用されます。


特に上記のような目立った自覚症状がなく、体重がオーバー気味でメタボリックシンドロームの疑いがあるような場合は水湿と瘀血の除去が有効であるケースが多いです。むくみ、頭重感、身体の重だるさ、下痢などがあり水湿の存在が疑われる場合は水湿を取り除く白朮、蒼朮、沢瀉、猪苓、茯苓などの利水薬(りすいやく)が使用されます。


静脈瘤、肌にアザやクマができやすい、顔色や唇の色の暗色化、冷えのぼせ、女性の場合は生理不順や強い生理痛があるケースでは瘀血が潜んでいる可能性が高いです。桃仁、川芎、牡丹皮、紅花、延胡索などの瘀血を除去する活血薬(かっけつやく)が用いられます。


これら以外にも主訴や体質が微妙に異なる場合はそれに合わせて漢方薬を対応させる必要があります。したがって、実際に調合する漢方薬の内容もさまざまに変化してゆきますので、一般の方が自分に合った漢方薬を独力で選ぶのは非常に困難といえるでしょう。


生活面での注意点と改善案


本態性高血圧を改善するうえで生活面の見直しは非常に重要です。見直しによって加齢とともに進んでゆく高血圧症の進行を抑制することは充分に可能です。そのためには高血圧症に繋がる要素を知ることが不可欠です。


まずは肥満気味で糖尿病や高脂血症を患っている場合、体重を減少させることはとても有効です。そのためにも軽運動の実施、高脂肪や炭水化物を多く含む食生活を改めて魚や野菜・果物を積極的に摂るようにしましょう。しかし、これらは簡単なことではありません。


そこで有効なのが家族や職場の人間に「ダイエットをして体重を5kg減らす!」という風に宣言し、減量せざるを得ない環境をつくるという方法です。これは禁煙を行うときにも効果があります。


食生活に関してはアルコールや食塩の量も減らすことによって血圧を下げることができます。アルコールに関してはビールならば1日700mL以下、ワインならば240mL以下が望ましいです。食塩に関しては1日6g未満が良いとされていますが、アルコールと違ってどれだけ摂取しているのか食塩は知ることが難しいです。したがって、できる限り薄味の食べ物を選ぶことが重要になります。


ストレスは交感神経を興奮させて、顕著に血圧を上昇させます。したがって、可能な限りリラックスできる時間を確保することが大切です。ウォーキングなどの軽運動はカロリー消費だけではなくストレス解消にもなります。歩いた距離や減少した体重を表計算ソフトなどでグラフ化すると結果が目に見え、モチベーション向上にもなります。


高血圧症の改善例


患者は50代前半の男性・公認会計士。会社の定期健診で高血圧症と高脂血症(高コレステロール血症と高中性脂肪)を指摘され続けていましたが、病院嫌いのためにそれを放置。しかし、すでに当薬局にかかられていた奥さまが心配し、当薬局にご来局。


奥様曰く「学生時代(四半世紀も前になりますが)はラグビー部に所属しており、ガッチリとした立派な体型だった」そうですが、就職してからは運動量も減り30代半ばから急速に肥満傾向になったという。ご本人も定年退職した先輩が脳梗塞で倒れたと聞いた直後だったので、真剣に取り組みたいとのこと。


まず、漢方薬は西洋薬と比べて血圧を低下させる力は弱いことをお伝えし、4~5ヵ月で結果が出なければ病院を受診することをお勧めしました。それを踏まえてご本人からご体調を伺うと、体重の増加とともに慢性的な頭痛と便秘も気になるとのこと。


身長は175cmで体重は控えめに見ても約90kg強。食事は20代の息子たちよりも食べていると奥様がおっしゃられました。問題の血圧は160/110近辺で推移しており、最近は顔の赤みが引かずのぼせ感があり、イライラすることも多くなったという。


この方には代謝を促進して便通をよくする大黄、身体の熱感や気持ちを抑える黄芩、血管拡張作用が知られている釣藤鈎などから構成される漢方薬を服用して頂きました。服用から4ヵ月程度が経過した頃になると飲酒後のようだった顔の赤みも減り、気持ちが高ぶることも減ってきたという。


食事は腹八分目を心がけて野菜から最初に摂るようになり、そのような食生活の改善もあって徐々に3日に1回程度だった便秘や腹部の不快な張り感も解消されてきました。肝心の高血圧症や高脂血症は服用から約1年後の健康診断において血圧135/95で、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)量は減少し、HDL(善玉コレステロール)の量が大きく増加していました。体型も「2年前に買った礼服のズボンを久しぶりに着たが、とても小さく感じられた」とのこと。


徐々に体重が減ってくるとそれが嬉しくなり1日10000歩を目指してのウォーキングも始めたという。体重は75kgにまで落ちてかなりスラっとした印象へ。奥様も「一目で『肥満症の人』とわかる状態ではなくなったので、一緒に外出する時も恥ずかしくなくなった」と冗談半分におっしゃられていました。現在はストレスで悪化する首や肩の張り感などにも対応しながら継続して漢方薬を服用して頂いています。


おわりに


まず第一に純粋に血圧のみを下げるのは西洋薬の方が漢方薬よりも優れていることは間違いありません。脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高いような高血圧症の方はまず、西洋医学的な治療を優先するべきだと考えます。一方の漢方薬は生活習慣の改善と並行して、血圧が上がりにくい身体づくりを行うことが可能です。


漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では西洋薬を服用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしば来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、状態が好転する方がとても多くいらっしゃることから、高血圧症と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、高血圧症にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 血行不良(血流の改善) 】と漢方薬による治療

血行不良とは


近年、健康意識の高まりとともに血行に対しても注目が集まっています。健康雑誌などでもしばしば「血行改善」「血流を良くする」といった特集を目にします。私たちの心臓は常に血液を身体に巡らせるために拍動しています。


健康診断では血圧の状態や貧血の有無を確認します。血行や血流への関心の高さは、私たちの意識のなかで血が「健康」「生」と強くリンクしているからかもしれません。


血液には酸素や栄養素だけではなく細菌やウイルスから身体を守る白血球や抗体、さらにはホルモンや処理される老廃物なども含んでいます。この血液が心臓のはたらきでしっかりと身体を巡ることで健康が維持されています。逆に血行が悪くなってしまうと、これらの循環が滞り身体に不具合が出てしまうことは想像に難くありません。


西洋医学的に血行不良を考えると、主に血栓(けっせん)や動脈硬化によって血管が塞がれている状態などが挙げられます。心臓を取り巻く血管の血行が悪くなれば心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患、脳の場合は脳梗塞や脳出血によって脳卒中に到ってしまいます。


一方の漢方医学においては瘀血(おけつ)という独自の概念があり、これが一般の方が抱く「血行不良」状態のイメージに近いといえます。つまり、「血行を改善する」「血液ドロドロを解消する」「血の巡りを良くする」ことは、漢方的には瘀血の状態を改善することといえます。そこで、本ページではこの瘀血に焦点を当ててゆきたいと思います。


なお、厳密には滞っている血(けつ)そのものを瘀血と呼び、瘀血が形成されてしまっている状態を血於(けつお)と呼びます。瘀血は病的産物であり、血於は病的状態ということです。しかしながら、多くの場合は両方をひっくるめて瘀血と表記することが多いので、本ページでもその方針を採っています。


瘀血とは


漢方医学において血(けつ)は身体を栄養したり、精神状態を安定させるはたらきを担っています。前者は西洋医学における「血液」の考えと近いですが、後者のメンタルヘルスにも関係している点では異なります。


したがって、瘀血に陥ってしまうと全身的または局所的なこり感や痛み、さらに栄養不良状態、不安感や不眠といった精神症状も現れてしまうと漢方では考えます。このように漢方において血行不良はとても幅広い症状を引き起こすものと考えます。下記では瘀血の原因や具体的な症状、そして瘀血を改善する漢方薬について解説してゆきます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


血行不良(瘀血)の原因


漢方の考え方では血はそれ自身のみで身体のなかを巡るのではなく、気の力を受けて巡っています。したがって、気が不足した気虚(ききょ)や気が滞った気滞(きたい)の状態に陥ると瘀血が生まれやすくなってしまいます。


具体的には過労や大病によって気を消耗したり、精神的なストレスを受け続けることで気の巡りが停滞したりすると瘀血は生まれやすくなります。その他にも身体の冷やし過ぎ、むくみに代表される水分代謝異常、打撲や捻挫、さらには血自体の不足である血虚(けっきょ)などによっても瘀血は引き起こされます。


上記のように血は非常に多くの原因によって停滞し、瘀血が形成されてしまいます。結果的にさまざまな体調不良の背景には血行不良(瘀血)がセットで潜んでいるとも解釈できます。長時間労働やストレスが蔓延している現代社会において、瘀血が皆無という方は少数派といえるでしょう。


血行不良(瘀血)の症状


血行不良、つまりは瘀血によって起こされる症状はとても多彩です。そのなかでもしばしばみられるのが下記で挙げた諸症状になります。血行不良は幅広い症状をもたらす一方で、血流が改善されることで悩まされていた複数の症状が好転することも多いです。


頻繁にみられる身体症状

肩こり、首こり、頭痛、腰や背中の痛み、関節痛、胸痛、しびれ、肌の色素沈着(アザ、シミ、クスミ、眼下のクマ)、冷えのぼせ、しもやけを含む手足の末端の冷え、動悸、むくみ(浮腫)、赤ら顔、疲労感、重だるさなど


婦人科系の症状

不妊症、生理不順や無月経、不正性器出血、生理痛、子宮内膜症や子宮筋腫といった生理痛をもたらす病気、月経前症候群(PMS)によるイライラ感、経血の暗色化と塊の増加など


血管と関連が強い症状

高血圧症、静脈瘤、動脈瘤、内出血、皮下出血、紫斑、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)、具体的な病名では心筋梗塞や狭心症、脳梗塞や脳出血を含む脳卒中、血栓性静脈炎、精索静脈瘤など


その他の症状

抜け毛の増加による薄毛、ED(勃起不全)、肌の乾燥や荒れ、爪がもろくなり割れやすくなる、ドライアイ、便秘、健忘(記憶力の低下)、不眠など


血行不良(瘀血)による痛みの特徴

上記ではさまざまな瘀血による諸症状を挙げてきましたが、痛みをともなうものが非常に多いです。さらに瘀血によって起こる痛みにはいくつかの特徴があります。


主には痛む場所が固定されている、刺すような強い痛みがある、夜間に悪化しやすい、患部が腫れたりしこりができる、患部が紫色や赤黒く暗色化するといった点が挙げられます。


より具体的には、疲れがたまる夕方以降に首肩こりと一緒に痛みがある、長時間のデスクワーク後につらい腰痛に襲われる、古傷が何年経っても痛むケースなどにはほぼ確実に瘀血が関与しています。他にも出血や炎症をともなう病気全般にはしばしば瘀血が関与しています。


血行不良(瘀血)による栄養状態の悪化

血の巡りが悪くなると必然的に血の供給量も低下してしまいます。そうなると瘀血の症状にくわえて血虚の症状も目立ってきます。血虚の症状とは栄養不良の状態と考えればわかりやすいでしょう。


すでに挙げた肌や眼の乾燥、爪のもろさ、抜け毛の増加による薄毛、ED(勃起不全)などは瘀血の症状というよりも瘀血由来の血虚症状といえるでしょう。一方で血虚はさらなる瘀血の原因にもなるので、瘀血+血虚の症状は頻繁しやすいです。


漢方薬を用いた血行不良(瘀血)の治療


血行を改善する漢方薬は主に活血薬(かっけつやく)を中心に、理気薬(りきやく)や補血薬(ほけつやく)を組み合わせたものになります。活血薬とはそれ自体に血行改善作用のある生薬であり、桃仁、川芎、牡丹皮、紅花、延胡索などが代表的です。


理気薬とは気の流れが悪くなっている気滞を解消する生薬です。血は気の力によって身体中を巡っているので、気の巡りが悪くなると血の流れも悪くなってしまいます。血行不良はしばしば気滞によって起こるので理気薬は血行改善に不可欠な生薬といえます。


気の流れは主に精神的ストレスによって悪くなります。精神的なストレスに晒されて、身体が硬くなり肩こりが悪化するようなケースは典型的な気滞由来の瘀血の症状といえます。代表的な理気薬には柴胡、厚朴、半夏、薄荷、枳実、香附子などが含まれ、ストレスを緩和するはたらきを持っています。


瘀血は気滞の他に血虚によっても引き起こされますし、瘀血から血虚に陥るケースもしばしばです。血虚を改善する補血薬には主に地黄、芍薬、当帰、酸棗仁、竜眼肉などが挙げられます。栄養状態がすぐれないような方には補血薬が不可欠となります。


上記の他にも血行は冷えによっても悪化しやすいので、その際には身体を温める散寒薬(さんかんやく)が使用されます。代表的な散寒薬には附子、桂皮、乾姜、呉茱萸、細辛などが含まれます。冷え以外にも水分代謝の滞りや気の不足によっても瘀血は起こります。したがって、個々人の症状や体質によって漢方薬は変化してゆきます。


血行不良(瘀血)の改善例


改善例1

患者は30代後半の女性・システムエンジニア。仕事柄、座ったままディスプレイを長時間見ていることが多く、慢性的な肩こりと痛みに悩まされていました。肩こりは悪化すると後頭部の痛みにもつながり、そこからイライラ感が増し、集中力も低下気味。血流改善を訴えるサプリメントや健康器具、さらに岩盤浴や鍼灸などを試しても効果はありませんでした。


首の骨に問題でもあるのかと思い整形外科を受診しても特に異常は指摘されず鎮痛作用のあるロキソニンテープが処方され、使用していましたが好転せず当薬局へご来局。「1日に何回も首を回したりマッサージをしているが良くはならない。たかが肩こりかもしれないけれど我慢の限界」とのこと。


よりくわしくご症状を伺うと、慢性的なこりのご症状は首から背中にかけて僧帽筋全体に及んでいました。肩こりや頭痛の他にも生理痛や足の冷えとむくみも気になるという。顔色はやや浅黒く、手足は軽くどこかに当たっただけでアザができやすい体質。この方のご症状は典型的な瘀血によるものであり、血を巡らす桃仁や牡丹皮から構成される漢方薬を調合しました。


漢方薬を服用して3ヵ月が経過すると生理時に毎月服用していた鎮痛薬を使わなくても済むようになりました。頭痛の頻度も低下したとのことでしたが、肩こりによる不快感はあまり変わりませんでした。そこで首肩の筋肉をリラックスさせる作用のある葛根を含んだ漢方薬に変更しました。くわえて出来るだけ座りっぱなしではなく、歩くことを意識して頂きました。


新しい漢方薬に変えて1ヵ月ほどで「首を横に振ってポキポキと鳴らすことが少なくなった気がする」とのこと。ウォーキングを意識して行ったことも手伝ってか下肢の冷感やむくみによる重だるさも少しずつ軽くなっていました。


この方は全体的に緩やかな改善が見られたので、数ヵ月間は同じ漢方薬を継続していただくことにしました。その後も首肩のこりや頭痛に悩まされることも減り「繁忙期には吐気がするほどの不快感があった肩こりは完全に起こらなくなった」という。


生理痛を中心とした婦人科系のトラブルも軽減し「漢方を飲んでいると抜け毛が減って、肌もカサカサせずに調子が良いので」美容目的もかねて継続されています。冬季は身体を温める桂皮や乾姜を含む漢方薬に変更するなど微調節は行いつつ、一貫して血を巡らす内容で漢方の服用を続けていただいています。


改善例2

患者は40代前半の男性・会社員。昔から赤ら顔でほてり感を感じやすい体質でしたが、数年前からその症状が悪化。上半身は不快なほてり感があり、下半身は腰から下に顕著な冷えが現れるようになりました。毎年、受けている健康診断では軽度の高血圧症が指摘され、これ以上悪化すると本格的な治療が必要とのこと。年々、これらの症状が悪くなっていると感じ、当薬局へご来局。


暖かくなってくる春先になると、ほてりが目立ち始めて頭痛が起こることも。「頭痛が出だして痛み止めを飲むようになると、春が来たんだなと実感する」という。一方で鎮痛薬を服用すると必ず胃に不快感が生じるので出来るだけ服用は控えている。


よりくわしくご症状を伺うと赤ら顔や頭痛、上半身のほてりと下半身の冷え、その他に肩こりや抜け毛の多さ、そしてドライアイも顕著であることがわかりました。苦笑しながら「PCを使っていると眼がすぐに乾燥する。デスクの上には抜け落ちた髪が目立ち、それを見つけると非常に衰えを感じる」という。


これらのご症状や体格などから血を巡らす当帰や川芎、血を補う力に優れている地黄などを含んだ漢方薬を調合しました。くわえて禁煙とお酒の減量をお願いしました。ご本人も何かのきっかけがないと生活習慣の改善はできないと考えていたとのことで、前向きなご様子でした。


漢方薬を開始して2ヵ月が経つと、首の上部から背中にかけての張り感が緩和されて肩こりが気になることはなくなりました。一方で季節は初夏に入り、顔を中心としたのぼせ感は依然として強く、肩こりほどの改善は実感できないとのこと。季節も考慮して、血行改善を維持しつつ黄芩や黄連といった過剰な熱を冷ます生薬も含んだ漢方薬に変更しました。


新しい漢方薬は苦くて飲みにくいとのことでしたが不快な熱感は軽減され、飲酒後のような顔の赤みも薄くなり「奥さんからも酔っ払いみたいと言われることはなくなった」とのこと。他にはドライアイで点眼薬を使う頻度も減少しました。


季節は冬になり、ヒーターが入るようになっても例年のような強烈なのぼせ感に襲われることはありませんでした。腰から下の冷感も緩和され、分厚いタイツをはかなくても済んでいるとのこと。気温が低くなると悪化しやすかった血圧も正常血圧から正常高値血圧の範囲内に収まりました。


春が訪れても頭痛や肩こりに悩まされ、仕事に集中できなくなることはなく過ごせているとのこと。「身体の不調が減って気持に余裕ができた。ストレスも軽くなった気がする。そのおかげか抜け毛も落ち着いた」ということで、継続的に漢方薬を服用していただいています。


おわりに


スムーズな血の巡りは生きてゆくうえで欠かせないものです。血が滞って瘀血の状態に陥ってしまうと心身両面に悪影響が及んでしまいます。血の停滞は生命エネルギーである気や有益な水分を指す津液(しんえき)の停滞にもつながってしまいます。


長時間労働をこなし運動不足の現代人はおおむね瘀血に由来する体調不良を抱えています。漢方薬は瘀血を解消することで生活の質を改善することが出来ます。上記で挙げたような血行不良による症状にお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

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