漢方名処方解説

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1)漢方が必要とされる理由

近年、漢方に注目が集まっています。大型のドラッグストアには数多くの漢方薬が並び、雑誌にもしばしば漢方特集が組まれています。なぜこのような潮流が生まれたのかを考えると二つの側面が見えてきます。

ひとつは漢方薬の有効性が科学的(統計学的)に再評価されたことが挙げられます。漢方薬の効果に対して客観的な分析が進み、その力が広く知られるようになりました。そしてもうひとつは西洋医学的な治療とは異なる選択肢として、漢方が選ばれているという側面もあるでしょう。

西洋医学は人類が生み出した最も素晴らしい技術であることに疑いはないでしょう。特に古代から人類の敵であった感染症に対して公衆衛生の改善とともに西洋医学は多大な貢献をしてきました。さらに西洋医学的な手術に比肩する外科的治療法をもつ他の医学は存在しません。その一方で今日、西洋医学的アプローチでは対応が困難な問題も浮上しています。

西洋医学は病気を起こす特定の存在が明らかな場合、それを鋭く攻撃することを基本的な戦略として絶大な力を発揮します。例えば抗生物質は細菌を、抗ウイルス薬はウイルスを倒すことによって感染症を治療します。鎮痛剤の成分として有名なアスピリン(一般名はアセチルサリチル酸)は痛みを起こす「物質」を体内で作りにくくすることで効果を発揮します。しかしながら、そのような存在が見つからなかった場合などは西洋医学的なアプローチは困難に直面してしまいます。

一方の漢方医学は病気や体調不良に対してのアプローチが異なります。漢方医学では身体内における気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)や五臓六腑(ごぞうろっぷ)などのバランスを重要視します。何らかの存在によって上記のバランスが崩れてしまった状態を漢方医学では病気の状態と捉え、漢方薬はこの崩れたバランスを回復することで治療を行います。

したがって、西洋医学的な病原的存在が確定しなくても治療を行うことが可能なのです。換言すれば漢方医学は西洋医学的な視座からは病気と判断できない、または判断しないような症状にも対応してゆくことができるのです。

私たち日本人が生きる現代はとても便利な時代です。ほぼすべての人が西洋医学的な治療にアクセスすることができる時代でもあります。しかしながら、博報堂生活総研が1990年代から行っている大規模調査(生活定点1992-2014)において一貫して約60%は「健康に不安がある」と答えています。このような背景の中で、漢方医学は西洋医学では対応が難しい健康問題に対しての、異なった視点からの解決策として再評価されていると考えられるのです。

繰り返しになりますが、西洋医学が人類の健康に多大な貢献をしてきたことは事実です。21世紀に入り再生医療というまったく新しい治療法も生まれ、日々進歩を続けています。今後、西洋医学界では私たちが想像もできないような治療技術のブレークスルーも起こり続けるでしょう。

しかし、ヒトの心身はある一面を見ただけですべてが把握できるほど平面的なものではないはずです。より複雑で立体的な存在であるヒトを見るためには異なった視点も不可欠です。今後、西洋医学だけでは対応が難しい健康問題を漢方医学などが補完してゆくことが、望ましい医療の姿なのではないでしょうか。

本カテゴリー(漢方名処方解説)では漢方の姿をわかりやすく解説してゆきます。可能な限り、漢方に関する予備知識の無い方が読んでも理解の進むように構成していますので、他ページも是非、ご参照ください。


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