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【 膀胱炎(間質性膀胱炎を含む) 】と漢方薬による治療

膀胱炎とは


膀胱炎とは主に細菌感染によって膀胱の粘膜に炎症が起こる病気です。原因菌はいくつか種類がありますが、そのなかで最も多いのが大腸菌によるものです。大腸菌は主に便や肛門に存在し、そこから尿道を経て膀胱へ感染します。


膀胱炎はしばしば女性に多い病気とされます。その理由として女性の身体は構造的に尿道口、膣、肛門が近くに存在するため、大腸菌などの原因菌が肛門から尿道口へ移りやすいためと考えられます。さらに女性の尿道は男性と比べて短いので、尿道口から膀胱へ細菌が広がりやすいことも女性に膀胱炎が多い理由です。


一方の男性は女性よりも尿道が長いので原因菌が膀胱に到着する前に尿で洗い流されやすいです。つまり、男性はより膀胱炎になりにくい身体構造といえます。一方で尿道が長いので細菌が膀胱に至る前に尿道で尿道炎を起こし、そこから前立腺炎になってしまうケースが多いです。


間質性膀胱炎とは


上記において膀胱炎は主に細菌感染によって起こると説明しましたが、細菌が検出されない間質性膀胱炎というタイプの膀胱炎が存在します。間質性膀胱炎はしばしば無菌性膀胱炎とも呼ばれ、中年以降の女性により多いことが知られています。何らかのアレルギー反応や膀胱粘膜の異常が関与していると考えられていますが詳しい原因が不明なため、西洋医学的に治療が困難な膀胱炎といわれています。


間質性膀胱炎の症状は下記で示す一般的な膀胱炎とほぼ共通しています。しかし、間質性膀胱炎は治療が困難なために頻尿や排尿痛が慢性化しやすく、QOL(生活の質)を大きく低下させてしまう病気といえます。


膀胱炎の症状


膀胱炎で最も多い症状は排尿時に起こる下腹部の痛みやヒリヒリとした不快感です。それ以外にも尿量の少ない頻尿、残尿感、炎症が激しい場合は血尿が出ることもあります。間質性膀胱炎の場合、尿の回数や排尿への切迫感が細菌性の膀胱炎よりも多い傾向があります。さらに間質性膀胱炎が慢性化すると膀胱が萎縮、つまり小さくなってしまうことが知られています。


膀胱炎の西洋医学的治療法


西洋医学的な膀胱炎治療は抗生物質による原因菌の除菌が基本となります。一般的な膀胱炎の場合は除菌でほぼ改善しますが、間質性膀胱炎には無効です。間質性膀胱炎に対しては主に抗炎症薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬、抗うつ薬などが使用されます。萎縮してしまった膀胱に対しては外科的に膀胱へ生理食塩水を注入する膀胱水圧拡張術も検討されます。しかしながら、間質性膀胱炎に対して明確な治療法は確立していないというのが現状です。


膀胱炎の漢方医学的解釈


漢方医学的に膀胱炎の原因は主に湿熱(しつねつ)によるものと捉える場合が多いといえます。湿熱とは身体において流動性を失ってしまった余分な水分である水湿(すいしつ)が、さらに熱を帯びた病的物質といえます。


湿熱の「原料」ともいえる水湿は主に、暴飲暴食や精神的ストレスなどによって消化器のはたらきが悪くなると生まれやすくなります。さらに水湿が長時間放置されたり、アルコールや脂肪分の多い食事を摂り続けると、徐々に水湿が熱を帯びて湿熱となります。


湿熱はその性質上、身体のより下部に溜まる傾向があります。したがって、湿熱が生じると身体下部へ移行し、脚を除けば最も下部に当たる膀胱に溜まりやすいです。膀胱に到った湿熱は膀胱が持つ本来の正常なはたらき(尿を作る、尿をためる、尿を出す)を妨害してしまいます。結果として膀胱炎特有の頻尿や残尿感、ひどくなると激しい痛みや出血も現れます。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた膀胱炎の治療


膀胱炎の原因が湿熱だった場合、水湿を除く利水と熱を鎮める清熱を同時に行う漢方薬が治療の中心となります。水湿を除く生薬としては白朮、蒼朮、沢瀉、猪苓、茯苓、車前子、木通などの利水薬(りすいやく)が挙げられます。熱を鎮める清熱薬(せいねつやく)は黄連、黄芩、黄柏、山梔子、石膏などが代表的です。


上記のような利水薬と清熱薬をバランスよく含んだ漢方薬が間質性膀胱炎も含めた膀胱炎の治療にもちいられます。特に沢瀉、車前子、木通は利水作用と清熱作用があるので膀胱炎治療に適した生薬といえます。


湿熱以外に膀胱炎は、過労や加齢によって五臓における腎(じん)のはたらきが低下し、それに引っ張られて腎と関連深い膀胱の機能も低下してしまうことで発症することもあります。そのような場合は腎の力を底上げする鹿茸、地黄、山茱萸、山薬、枸杞子などの補腎薬を含んだ漢方薬の使用も検討されます。


生活面での注意点と改善案


細菌感染による膀胱炎を防ぐ手段として陰部を清潔に保つことは基本中の基本になります。毎日の入浴にくわえて女性の場合、生理時にはナプキンをこまめに交換するよう心がけましょう。


意外な感染経路としては性交が挙げられます。性交時は手などに付着していた雑菌から感染が起こりやすいので、必ずその後に入浴しましょう。新婚性膀胱炎や蜜月(ハネムーン)膀胱炎という言葉があるほどですので油断はできません。入浴が難しい場合は排尿により雑菌を押し流すことも有効とされています。


入浴は清潔な状態を保つだけではなく、冷えによる膀胱付近の血流悪化を防いでもくれます。膀胱への血流が悪くなると免疫力が低下し、細菌が繁殖しやすい環境となってしまいます。衛生面と免疫面の両面から入浴は優秀な膀胱炎対策といえます。


しっかりとした睡眠時間と休息日を設けることも大切です。充分な休みをとることも細菌に対する免疫を維持するために大切です。他には排尿を我慢し過ぎるとその間に膀胱内で細菌が繁殖しやすいので控えましょう。


間質性膀胱炎の場合はアルコール、香辛料などの刺激物、カフェインを含んだコーヒーやお茶類、柑橘類やそれを原料としたジュース、チーズ類、豆類、煙草などによって症状が悪化しやすいといわれています。個人差は大きいとされていますが、これらを多く取り過ぎないように気を付けましょう。間質性膀胱炎に限らず、細菌性の膀胱炎を患っている間も炎症を助長させないために刺激物とアルコールは控えましょう。


膀胱炎の改善例


改善例1

患者は40代前半の女性・高校教師。昔から冷え性(冷え症)体質でトイレが近かったが、40代になってからは授業が終わるたびにトイレに行くようになってしまいました。ひどいときには1日に10~15回も小水が出るようになってしまい、排尿後もスッキリとした感覚がありませんでした。


その後、排尿後には決まってピリピリとした痛みが残り、下腹部にはいつも違和感を抱えている状態になってしまいました。さらに冬になるとこの傾向は一層顕著に。当薬局へは病院の治療でも症状が改善しなかったので、それなら漢方薬を試してみようと思い立ちご来局。


詳しくお話を伺うと病院で抗生物質を処方され、服用後は症状が改善するもすぐに再発を繰り返す状態でした。膀胱炎以外に冷え性はとても深刻で毎年、冬には手と足にしもやけができてしまうほど。授業中はストーブの近くからあまり動かず授業を進めているという。


この方には出来る限り下腹部を冷やさないように腹巻きとカイロの使用をまずお願いしました。舌の状態や足にむくみがあることなどから水湿の存在を疑い、湿を取り除く沢瀉や茯苓に熱を鎮める山梔子や滑石を含む漢方薬を服用して頂きました。


漢方薬を服用し始めて2ヵ月が経過した頃には1回の尿量が増えてトイレに行く回数や痛みの強さがだいぶ減ってきました。この頃から本格的な冬が始まり、より一層の防寒対策をお願いしつつ同様の漢方薬を継続。


それから5ヵ月が経った頃には頻尿や排尿痛などの症状はほぼ消えていました。その後は完璧に膀胱炎の症状がなくなるまで同じ漢方薬を維持しましたが、完治後は膀胱炎の発症予防を兼ねて身体を温めて血行を改善する漢方薬に変更。冷え性(冷え症)も改善に向かい、その後に繰り返す膀胱炎を再発することなく継続服用されています。


改善例2

患者は30代後半の女性・自営業。20代後半から生鮮食品の市場で品質管理の仕事に携わっていました。仕事柄、大きな冷凍庫や冷蔵庫に向かって作業をしていることが多く、身体は冷やしがちに。その頃から秋から冬にかけて頻尿が目立ち始め、しばしば膀胱炎にかかるようになってしまいました。


30代になると徐々に膀胱炎が治りにくくなっていると感じていましたが、その都度、病院の抗生物質などで治療を行っていました。しかし、ひどいと1日に15~20回くらいトイレに行くように。衛生に携わる仕事でもあるので頻繁にトイレに行くことも難しく、心配にもなり大病院で検査を受けて間質性膀胱炎と診断されました。一方でなかなか治療の効果が出ず、当薬局へご来局。


ご症状などを伺うと、間質性膀胱炎による頻尿やすぐ膀胱に尿が溜まるような不快感はありましたが、特に痛みはなし。頻尿以外の症状としては下半身の冷え、腰の痛みと重だるさ、そして疲労感が顕著でした。この方は五臓における腎の力が弱まっていると考え、腎のはたらきを底上げする地黄や山茱萸から構成される漢方薬を調合しました。


漢方薬を服用して3ヵ月が経過すると冷えや腰痛が緩和され、仕事中に立ったり荷物を持ち上げたりするのが楽なったとのこと。足先が水に浸かっているような冷えによる不快感も緩和されてきました。一方の頻尿には大きな変化はなし。漢方薬の変更を考えましたが、ご本人も季節の割には(当時は年始で雪がちらつくこともある寒い時期でした)体調が上向いているとの言葉もあり継続へ。


漢方薬服用から半年が経ち、春を感じられる頃になると徐々にトイレの回数も1日10回程度まで減り、一番悩まれていた仕事への影響も減ってきました。切迫した尿意もトイレの頻度と比例して落ち着き、常に意識が下腹部に向いているようなことはなくなりました。


初めての漢方薬を服用してから1年が経った秋には泌尿器系の症状とそれ以外の冷えや疲れやすさも、日常生活と仕事に支障がないレベルに。その後にこの方はご妊娠され、その間は漢方薬と中断。出産後に漢方薬の服用を再開されましたが、引き続き安定した状態を維持されています。


おわりに


膀胱炎の原因の多くは細菌感染によるものですが、その背景には冷え性(冷え症)を放置してしまったり、トイレを我慢し過ぎてしまうなどの問題もあります。換言すれば生活習慣などを見直せば大きく改善が見込める病気ともいえます。一方で生活面を見直してもたびたび膀胱炎を繰り返すようならば積極的に漢方薬を服用することをお勧めします。


漢方薬は西洋薬では対応しきれないより根本的な原因に対応することができるものです。当薬局では西洋薬を服用してもなかなか改善が見られなかった方がしばしばご来局されます。そして漢方薬を服用し始めてから、頻尿や下腹部の不快感などの症状が好転する方がとても多くいらっしゃることから、膀胱炎と漢方薬は「相性」が良いと実感しています。是非一度、慢性的に膀胱炎にお悩みの方は当薬局にご来局くださいませ。

【 頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む) 】と漢方薬による治療

頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)とは


頻尿や夜間頻尿に代表される泌尿器系のトラブルは年齢とともに多くなりがちです。男性の場合、前立腺が加齢により大きくなることでうまく排尿ができなくなってしまう前立腺肥大症は生活の質を大きく下げてしまいます。他にも膀胱が緊張して狭くなってしまう過活動膀胱や精神的なストレスによってトイレが近くなってしまう心因性頻尿というタイプの頻尿も存在します。


頻尿とはおおよそ1日に8回以上の排尿があることとされ、夜間頻尿は就寝時に1回以上の排尿がある場合と定義されます。このような定義自体もまた大切な目安ですが、トイレの回数は普通であっても尿漏れが気になったり、残尿感が強かったりと不快感を覚える基準は個人によってさまざまです。


したがって、トイレの回数といった客観的な情報にくわえて主観的な情報をしっかりと捉えて漢方薬の調合につなげる必要があります。補足になりますが頻尿をともなう膀胱炎については 【 膀胱炎(間質性膀胱炎を含む) 】と漢方薬による治療をご参照ください。


頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の原因


前立腺は男性特有の器官であり、尿をためている膀胱の真下に尿道をくるむような形で位置しています。この前立腺は男性ホルモンなどのはたらきで肥大化することが知られています。前立腺肥大とは前立腺が加齢とともに大きくなり、尿道を圧迫することで尿の出の悪さによる頻尿や残尿感といった症状が起こる病気です。


過活動膀胱とは膀胱を取り巻く筋肉(膀胱平滑筋)が過剰に収縮してしまう病気です。結果的に膀胱が狭くなってしまうので充分な尿がためられず、頻尿を中心とした症状が起こってしまいます。


心因性頻尿は精神的なストレスを受けたり、特定の状況(出社や登校、プレゼンやテストの前など)などで頻尿が起こってしまう状態です。心因性頻尿の場合、ストレスが引き金になっているので尿検査(細菌の確認)や膀胱の異常などは確認できません。


これら以外にも加齢とともに尿道を締め付ける骨盤底筋が弛緩してしまい頻尿や尿漏れが起こってしまうこともあります。特に女性の場合は尿道が男性と比較して短いので、このタイプの頻尿が起こりやすいといわれています。


頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の症状


頻尿と一言で表現してもその内容は個人差があります。頻尿には実際にトイレに行く回数が多くなってしまうだけではなく、クシャミや重いものを持った時などに尿漏れも起こってしまったり、夜間頻尿によって睡眠不足から慢性疲労に陥ってしまうこともあります。


頻尿になってしまうことで日常生活への積極性が低下してしまうのも広い意味で頻尿の一症状と捉えられます。トイレに行くことが心配になってしまい旅行へ行くのを控えてしまうなど外出に後ろ向きになってしまうのは代表的な例といえます。


頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の西洋医学的治療法


西洋医学的な頻尿の治療には膀胱の緊張を緩和する薬がもちいられます。膀胱の「壁」である膀胱平滑筋を収縮させるのは副交感神経のはたらきであり、それを抑制する抗コリン薬と呼ばれるものが頻尿治療の主力です。これら抗コリン薬は便秘や口の乾燥を起こしてしまうこともあります。抗コリン薬にくわえて交感神経を刺激することで膀胱の容量を広げる薬も使用されます。


頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の漢方医学的解釈


漢方において泌尿器系のコントロールは五臓における腎が担っています。腎は年齢とともに機能が低下し、腎虚と呼ばれる状態になりがちです。腎虚になると頻尿や尿漏れといった泌尿器系のトラブルにくわえて疲れやすさや冷えやすさ、腰痛、身体の乾燥感といった症状が起こりやすくなります。


腎虚以外にも気のトラブルによっても頻尿は起こります。気のはたらきは多彩ですが、そのなかには膀胱に溜まった尿が漏れ出さないように維持するはたらきも含まれています。したがって、気が不足した気虚の状態になると疲労感や食欲不振にくわえて頻尿も起こりやすくなります。精神的なストレスによって気の流れが悪くなると排尿困難や残尿感といった症状が現れやすくなります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の治療


加齢とともに頻尿が顕著になるようなら腎虚を改善する漢方薬が治療の中心となります。頻尿や尿漏れにくわえて腰の痛みや重だるさ、冷え性(冷え症)、肌や眼の乾燥感、聴力や視力の低下などが目立つようなら腎虚が強く伺われます。具体的には地黄、山茱萸、山薬などの補腎薬を多く含む漢方薬が使用されます。


疲れやすさや食の細さといった気虚の症状がみられる場合は気を補う漢方薬が積極的に使用されます。代表的な気を増す生薬(補気薬)としては人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などが挙げられます。日常的にストレスが多い方には気の巡りを改善する生薬(理気薬)である柴胡、枳実、陳皮、半夏、厚朴、香附子などを含んだ漢方薬が検討されます。他にも冷え性(冷え症)が目立つようなら身体を温める生薬も使用されます。


生活面での注意点と改善案


体質的に冷え性があったり、冷やしやすい環境にある方は身体を温めることが大切になってきます。このタイプの方の尿は1回の排尿量が少なく、透明で水のような尿になりやすいです。夏でもお風呂はシャワーで終わらせず、しっかり湯船につかるようにしましょう。衣類は腹部を中心に薄着を避けるのが良いです。


他にも飲み物は利尿効果のあるカフェインを多く含むコーヒー、緑茶、紅茶、栄養ドリンク、くわえてカフェインは含まれませんが利尿効果を持っているアルコール類は摂り過ぎないようにしましょう。特に夕方以降だと夜間頻尿の原因にもなってしまいます。これら以外のものでも冷たいものを摂り過ぎると冷えの原因にもなりますので注意が必要です。


頻尿(前立腺肥大・過活動膀胱・心因性頻尿を含む)の改善例


改善例1

患者は50代後半の女性・スーパーに勤務。50代の前半から頻尿の症状が目立ちはじめ、勤務中に何度もトイレに行くようになってしまったとのこと。数年前からスーパーの生鮮食品を扱う部署に移り、大きな冷蔵庫の近くで働きだしてから頻尿がさらに悪化。帰宅後も頻繁にトイレを往復するようになってしまった。


より詳しくお話を伺うと頻尿にくわえて下半身の冷えとむくみ、冷えることで現れる腰痛、身体の重だるさのご症状もありました。この方にはご年齢や全体のご症状から腎虚と考え、腎の力を底上げする地黄や山茱萸、冷えを取り除く附子や桂皮などから構成される漢方薬を服用して頂きました。


服用から2ヵ月すると冷蔵庫の前ではじっとしていられないほどだった冷えは改善してきました。さらに2ヵ月が経つと1回の尿の出が良くなりトイレの回数は半分ほどになりました。むくみや重だるさも頻尿と歩調を合わせて緩和。その後は季節が冬になり、手先と足先の冷えが気になりだしたということで、身体を温めつつ血行を良くする漢方薬へ変更。変更後も泌尿器の調子は安定しています。


改善例2

患者は30代前半の男性・会社員。もともと緊張しやすい性格とのことですが、社会人となりプレッシャーのかかる場面(グループ内での仕事の進捗発表など)になると動悸と頻尿が強く出るようになってしまったという。徐々に勤務中以外でも尿意が頻繁に現れるようになり、当薬局へご来局。


ご症状を伺ってゆくと頻尿や緊張による動悸を中心に疲労感、吐気と食欲の低下、軟便、眠りの浅さなどがみられました。この方は身長が175cmと長身の割に52kgとやせ形で食の細さはこどもの頃からとのこと。漢方薬は牡蛎や竜骨といった精神状態を安定させる生薬を中心に胃にやさしい形で調合しました。


漢方薬を服用し始めてからすぐに胸や腹部が波打つような強い動悸は起こらなくなりました。3ヵ月くらいが経過すると胃腸の調子も安定して、疲れも依然と比べると感じにくくなったとのこと。一方でまだトイレに行く回数は日中で10回くらいある。漢方薬の変更も検討しましたが、ご本人がとても調子は良いとおっしゃっていたこともあり同じ漢方薬を継続して頂きました。


そして服用開始から半年が経つとより精神状態と体力に余裕が生まれ、それと比例して頻尿も改善してゆきました。夜にトイレへ行くこともなくなり睡眠もしっかりとれるようになったことが疲労回復を後押しした印象です。その後も一歩一歩、頻尿のご症状は緩和してゆき服用から1年が経過する頃には漢方薬を服用しなくても心身が安定した状態となりました。


おわりに


頻尿や尿漏れはその症状自体だけではなく、それに対する不安感によって行動に制限が生じてしまうこともしばしばあります。そうなると積極性も低下してしまい、気の巡りも悪くなって玉突き事故のように新しい症状を起こしやすくなってしまいます。


漢方薬をもちいた頻尿の治療はその原因にくわえて、頻尿によってもたらされる心身全体のトラブルにも対応できます。原因不明、または慢性的な頻尿にお困りの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

【 夜尿症(大人の夜尿症を含む) 】と漢方薬による治療

夜尿症(大人の夜尿症を含む)とは


夜尿症とは小学校入学以降も無意識のうちに夜間の排尿が行われてしまう病気です。おねしょは小学校入学前に起こるものであり、基本的に病気としては扱われません。夜尿症と似た遺尿症(いにょうしょう)という病名も存在します。これは夜間のみではなく、日中でも無意識に排尿してしまう病的状態を含んでいます。


定義上は病気と考えられる夜尿症ですが、小学校在学時でも5~10%程度の割合でみられるといわれています。したがって、決して珍しいものではありません。くわえて、年齢とともに改善傾向はありますが成人後でも夜尿症を患っている方は少なからずいらっしゃいます。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の原因


夜尿症を引き起こす主な原因としては膀胱の容量の問題(膀胱が小さい)、尿意があっても起床できない、排尿を抑えるホルモンであるバソプレシンの分泌不足などが挙げられます。これらの原因は身体の発育とともに改善してゆく傾向があります。くわえて相対的に頻度は少ないですが、腎臓の病気、てんかん、糖尿病などの病気が背景にあり夜尿症を引き起こしている可能性もあります。


逆に患っている方の性格や両親の育て方が原因となって夜尿症が起こっているわけではありません。夜尿症自体は非常に体質面に依存した病気といえます。したがって、夜尿症に対して過度にネガティブに捉える必要はありません。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の症状


夜尿症の症状は睡眠中の無意識な排尿以外にも、精神的な問題も含まれます。これは夜尿症を患っていることで自信を失ったり、積極性が低下してしまうことが挙げられます。結果的に外泊を含む旅行ができないなど、生活の質の低下が起こりえます。特に成人後の場合は仕事や家庭生活を営むうえで大きな問題となってしまいます。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の西洋医学的治療法


夜尿症の西洋医学的な治療は抗利尿ホルモン薬が中心となります。抗利尿ホルモン薬とは上記で登場したバソプレシンをもとに作られたデスモプレシンという成分を使用した薬で内服薬や点鼻薬としてもちいられます。この薬は腎臓で水分の再吸収を促し、尿を濃くする(尿量を少なくする)はたらきがあります。


抗利尿ホルモン薬以外では膀胱の収縮を抑える抗コリン作用を持ったトフラニール(一般名:イミプラミン)やアナフラニール(一般名:クロミプラミン)といった薬もしばしば使用されます。トフラニールとアナフラニールは三環系抗うつ薬と呼ばれるうつ病にもちいられる薬であり、その副作用である尿閉(尿が出にくくなること)を逆手にとって夜尿症にもちいられています。一方でこれらの薬は尿閉以外にも便秘や口の渇きという副作用もあるので、治療には慎重にもちいられます。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の漢方医学的解釈


漢方の立場から夜尿症を考えると、その背景には腎虚や気虚が大きく関わっているといえます。五臓六腑における腎は身体における水分代謝をつかさどっています。この腎の力がもともと弱かったり、弱まってしまうと夜尿症を含めた泌尿器系のトラブルが多くなります。


気は身体を活発化する生命エネルギーのような存在です。この気が不足している状態を気虚と呼びます。気は多くのはたらきを持っていますが、そのなかでも尿をしっかり身体内に保持するという役割も担っています。したがって、気虚に陥ると膀胱に充分な尿が保持できず、頻尿や夜尿症になってしまいます。


腎虚や気虚以外にも冷えや精神的なストレスによっても夜尿症を悪化させてしまうことがあります。したがって、全身的な症状と体質を含めて夜尿症の原因を考えてゆく必要があります。

(よりくわしい漢方用語などの説明は漢方名処方解説をご参照ください)


漢方薬を用いた夜尿症(大人の夜尿症を含む)の治療


漢方薬による夜尿症治療は腎の力を補うこと、つまり補腎が中心となります。補腎にくわえて気虚や散寒などを考慮してゆくケースが多いです。


具体的には身長や体重が平均よりも小さい、疲れやすい、顔色が青白いといった症状がみられる場合は腎虚と考えて熟地黄、鹿茸、山茱萸、山薬といった補腎薬を含んだ漢方薬がもちいられます。食欲不振、風邪をひきやすい、めまいや立ちくらみが目立つようなら気虚を改善する人参、黄耆、大棗、白朮、甘草などの補気薬を配合した漢方薬が適しています。


上記を基本としつつ、冷え性(冷え症)や水のような薄い尿が多く出るようなら身体を温める桂皮、乾姜、細辛、呉茱萸、附子などの散寒薬も使用されます。これら以外にも精神的なストレスによって気が停滞しているようなら気を巡らす漢方薬も考慮する必要があります。特に成人後も夜尿症が続いているケースでは精神的な負担も強いので、心身両面のケアが大切になります。


生活面での注意点と改善案


夜尿症を改善するうえで生活習慣や対応方法の見直しはとても重要になります。まず、患っているのがお子さんの場合、怒ったり注意をするのは逆効果になります。夜尿症は本人の意思で改善できるものではないので「もっと頑張って!」と言われても本人にはどうすることもできません。逆にうまくいった朝は褒めてあげる、うまくゆかなかった場合はスルーするのが良いです。


お子さんが寝ているときに起こしてしまうのも逆効果になります。これは抗利尿ホルモンのバソプレシンが睡眠中の夜間により多く分泌されるからであり、それを妨げることになってしまうからです。同じ理由で夜遅くまで起きているのも好ましくありません。


水分の摂取に関しては、無理に撮る水分を減らすことはありません。特に熱中症の恐れがある夏季に水分制限するのは危険です。一方で夕食から就寝までの間は冷たい水分の摂り過ぎは避けましょう。そして、就寝前には必ずトイレに行き、しっかりと布団の中に入って身体を冷やさないようにする習慣をつけてください。


くわえて、利尿効果のあるカフェインを含んだ緑茶、紅茶、コーヒー、喉が渇きやすくなる濃い味付けの食べ物(塩分の高い食べ物)は日常的に避けたほうが良いです。


夜尿症(大人の夜尿症を含む)の改善例


改善例1

患者は小学校4年生の男児。夜尿症が治らず、病院で排尿を知らせるブザーを使用した治療も受けましたが不調。病院からは薬の服用も勧められましたが副作用が心配でそれは避けることに。何もしないのも落ち着かないということで漢方薬の服用を希望し、当薬局へご来局。


お母様と一緒にご来局され、まず身長と体重を伺うと同年齢のお子さんと比較するとやや低め。夜尿症以外の気になるご症状としては手足に冷え、腹痛と軟便があるとのこと。あまり食に対して積極性はなく、お母様曰く「食べるものがなければ食べないで遊び続けている」という。


この子にはまず食欲や体力を向上させる人参や黄耆を含んだ漢方薬を服用していただきました。しっかりと服用できるかやや不安もありましたが特に問題なく漢方薬開始から2ヵ月が経ち、ほぼ毎日だった夜尿症の頻度は半分程度に。登校前に起こりやすかった腹痛や軟便はすっかり現れなくなりました。


ここで漢方薬を腎の力を底上げする地黄や山茱萸を含むものに変更。変更から半年が経つと夜尿症が起こることはなくなりました。季節は冬になっていましたが、手足が寒いと訴えることもなく、胃腸の調子も良い状態が維持されていました。その後、少々の中断期間がありましたが服用を継続され、修学旅行も無事に行くことができました。


改善例2

患者は20代後半の男性・書籍編集者。夜尿症が子供のころから続いており、病院での治療も行っていました。代表的な治療薬であるアナフラニールの服用によって排尿してしまう頻度は下がる一方、副作用の日中のふらつきや口の渇きが強く出てしまい続けることができませんでした。病院での治療以外にも治療法がないかを調べた末、当薬局へご来局。


より詳しくご様子を伺うと、症状は冬に悪化する傾向があるという。夜尿症以外のご症状としては下半身の冷え、疲労感、肌の乾燥などがありました。この方には身体を温める桂皮や附子、腎の力を補う地黄などから構成される漢方薬を服用していただきました。くわえて、お酒を含めた冷たい水分を控えていただき、腹巻などを利用して身体を冷やさぬようお願いしました。


漢方薬の服用から半年が経過すると、一年を通じてあった腰から下の冷えはなくなり、夜間の排尿も半分程度に減りました。その一方でお仕事が繁忙期に入り、疲労感がとても強いということで鹿茸と人参を含む生薬製剤を併用していただきました。併用を開始して3ヵ月程度が経つと、なかなか抜けなかった重だるさも軽減されたとのこと。夜尿症の方も新しい組み合わせの方が良いということもあり、繁忙期後も併用を継続へ。


漢方薬開始から通算で2年が過ぎると、よほど疲れが溜まったり冷えが強くない限りは夜尿症の症状は出なくなり、体調全般が安定しました。その後、一旦服薬は終了しましたがご結婚を機に再開。服用していない時も夜尿症に悩まされることはほとんどなかったとのことですが「お守りのかわり」と疲労回復を兼ね、改めて服用していただいています。


おわりに


夜尿症は患っている方が少なくない一方で、西洋医学的な治療法が限られている病気といえます。夜尿症は精神的な負担だけではなく、外泊を伴う旅行に消極的になってしまうなど生活の質を大きく下げてしまうものです。


漢方薬をもちいた夜尿症の治療は目立つ副作用もなく、お子さんでも安心して行えるメリットもあります。さらに夜尿症以外の困っていらっしゃるご症状も同時に改善を行える可能性があります。慢性的な夜尿症にお悩みの方は是非一度、当薬局へご来局ください。

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